すしログ日本料理編 No. 51 鶏一途@住吉(兵庫県)

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こちらは個人的に関西でもトップクラスだと感じる鶏料理のお店です。

神戸の中心街ではなく住吉という少々マニアックな立地ですが、鶏好きならば訪問する価値のあるお店です。

お店は駅を出てすぐの場所にあり、入り口が少し分かり辛くて隠れ家的。

ドアには「予約で一杯です」と掲げられており、予約難度の高さが窺えます。

店内は落ち着いた雰囲気で、席はゆったりとしたレイアウト。

 

メニューをめくると、料理数は絞り込まれており、使用する鶏は淡海地鶏。

滋賀の至宝・かしわの川中さんの、生産量が少ない地鶏です。

僕は一人で伺ったため、基本的にサイドメニューは頼まず、串に専念する事にしました。

ただ、こちらの大人気メニューである【鶏刺】は事前に確保頂いていたので、さっぱりとスタート。

頂いたお酒は船中八策と赤兎馬。

個人的に焼鳥には日本酒よりも焼酎の方が相性が良いと感じますが、船中八策は良質な炭を用いたパワフルな鶏にも負けません。

日本酒は鶏の旨味、風味、炭の燻香とのバランスを考慮するのが吉ですね。

 

料理の全体的な感想としては、ご主人は火入れが非常に巧く、部位によって加減を絶妙にコントロールされております。

淡海地鶏の旨さについても改めて感服しましたが、素材を申し分なく味わわせてくれるのは、ご主人の腕があってこそ。

淡海地鶏は奥久慈軍鶏にタメを張るくらい部位ごとのインパクトが大きいように感じますが、「味付け」ではなく「焼き加減」でメリハリを付けられる技術を堪能させて頂きました。

勿論、コゲなど無く、塩加減(振り塩)にブレはありません。

頂いた料理は下記の通りです。

 

鶏皮ポン酢

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揚げた鶏皮ポン酢ではなく、サッと湯を通した鶏皮。

噛みしめるとぷるぷるした食感と共に、芳醇な脂の旨味と香りが漂う。

ポン酢もキツすぎず、「おっ」と思わされる先付。

 

鶏の刺身

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塩は宮古島産とパキスタン産(岩塩)。

部位は胸、心臓(ハツ)、極上白肝(白レバー)、砂ずり(砂肝)、笹身。

確かに、事前に予約しておかないと売り切れるのが分かるほどのクオリティ。

【胸】みっちりとした弾力ある食感に爽やかな酸味が宿る。

【笹身】胸よりも甘みが強く、サクッと切れた後にとろけるような繊維質。

【砂ずり】非常に力強い食感で、噛みしめた後に残るコクが良い。

【ハツ】トロトロと脂の甘みが滲み、程良くシャクッとした食感。

【極上白肝】素晴らしく柔らかな食感に強い甘みがまとわりつき、クセの無いフォアグラを生で頂いているような感動を抱く。

 

串ものについては、先ず日替わりの【おまかせ6本】を。

 

笹身

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1本目から感動。

ふんわりと、とろけるようなレアに仕上げており、絶妙な火入れ。

 

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胸肉とは思えぬみっちりと力強い食感に、上質な脂がノリノリ。

ジューシィでほどけゆく脂の粒子。しかし、胸の柔らかな酸味が上品に纏めている。

 

心臓(ハツ)

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力強い甘み…いや、もの凄い旨味を宿すハツ。

刺身も素晴らしかったが、火入れした方が味の輪郭が強調される。

 

ぼんじり

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ぼんじりなので脂主体だが、爽やかな味わい。

 

手羽先

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繊維がするっとほどける上品な食感と脂のバランス。

聞けば、雌を使用しているとの事で成程。

 

背肝(腎臓)

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稀少部位。極めてフレッシュな香りで、タレの照り焼き感も良い。

 

おまかせの後はお好みで追加しました。

 

肉厚しいたけ

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個人的に椎茸は焼鳥店の技術が判ってしまう、恐ろしい素材だと考える(笑)

こちらでは瑞々しさを閉じ込め、旨味を引き出しており、ぷるぷる、ねっちりと舌に絡む官能的な食感が抜群。

香りも良く立てている。

 

ねぎみ(葱間)の雌雄食べ比べ

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雄は食感と香りが強く、雌はバランスに長けている。

使用している部位はモモ。

部位によって雌雄で旨味や酸味の質がハッキリと異なるため、好みが分かれそう。

どちらが良いと言う問題ではない。

また、こちらは葱の甘みの引き出し方も秀逸。

 

つくね

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パン粉をまぶして焼き、かすかに焦がしているところがポイント。

非常にジューシィなつくねを香ばしさが包み込んでいる。

旨味だけでなく酸味も感じたが、部位を混ぜているのだろうか。

 

玉子かけご飯

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削りたての本枯節をまぶしたご飯と頂くTKG。

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醤油数滴でも十分美味しく、卵の良さを活かす工夫が見られる。

 

鶏スープ

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一見サラッとしているが、しっかりと旨味を抽出したスープ。

こちらは塩気を利かせており、すり胡麻がアクセント。

 

お店は非常に混んでおりましたが、

前述の通り落ち着ける席配置なので、寛いで頂く事が出来ます。

また、電話はご主人が出られている点も印象的。

勿論焼きが佳境に入っている時は出られておりませんでしたが、お客と向き合おうという心意気はこういった些細な点から感じ取られ、焼きの技術に収斂されているように思いました。

心行くまで鶏とお酒を楽しみ、お会計は8,600円。

食べ過ぎです(笑) 普通はそんなに行きません。

ただ、焼鳥店からすると「高級店」となりますが、全く以て費用対満足度の高いお店です。

ご主人は、「関西の焼鳥店は東京に比べると弱い」と謙遜交じりに仰っておられましたが、いやいや!こちらは東京の一流店と比べても互角以上だと感じました。

 

店名:鶏一途(とりいちず)

食べるべき逸品:絶品鶏刺と焼き加減でストーリーをストーリーを紡ぐ焼鳥

予算の目安:6,000円~

最寄駅:住吉駅駅から120m

TEL:078-857-1795

住所:兵庫県神戸市東灘区住吉本町1-3-13 2F

営業時間:17:00~24:00

定休日:木曜、第3水曜

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