すしログ No. 180 菊鮨@大野城(福岡県)

2017年2月訪問

こちらは福岡県のみならず、九州各地の鮨職人からオススメされたお店です。

特に、鹿児島の鮨匠のむらさん熊本の仙八さんなど、個性派職人さんからオススメされた以上、いつか行かねば!と思っておりました。

 

お店は福岡市ではなく隣の大野城市にあり、博多駅から25分ほど。

時間は少々かかりますが、アクセスは楽な部類かと思います。

そして、大野城駅から歩くこと10分弱、お店は住宅街にあり、銀色の看板が目を惹きます。

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アプローチを進むと、洗練された空間が目に飛び込んでくるので、少し驚きます。

カウンターは横に長く、ゆとりを持って間隔が取られており、大きな窓から光が差し込んでおります。

非常に開放感のあるお店です。

また、お店に入った時の匂いも良く、名店の最低条件を一つクリアします。

 

お昼は4,500円、夜は10,000円のおまかせのみとなります。

菊鮨さんの握りの概観

頂いた感想としては、九州…いや、西日本全域で考えても、抜群の個性を誇っているお店だと感じました。

米酢のシャリと赤酢のシャリを使い分けられつつ、赤酢のシャリに〆た光物を合わせられるところは興味深い。

仕事の方も個性的で、熟成を駆使しておられます。

九州の方にとっては、大変目新しく斬新な味わいなのではないかと思います。

 

シャリは酢を立たせ、やや硬めの仕上げで、温度は理想に近い温度帯。

硬さと温度が一定だった点は非常に好ましいです。

都内の人気店でも乱れがある事が多いので、これは親方の武器だと感じます。

 

そして、握りの形状は美しく、端正。

シャリは丸みを帯びて可愛らしくも、タネの切りつけは凛々しいです。

概ね5手で握られており、スピードも速く好印象でしたが、望むらくはたまにされる捨てシャリを直せば更に良くなるかと思います。

 

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ガリも大変美味しく、塩気は穏やかで、酸味や辛みもミニマムに絞り込みつつ、存在感があります。

軽い甘みと強い旨味(酢由来)のバランスが良好です。

 

ただ、個人的に少々気になった点としては、シャリの旨味と塩分に対して、熟成タネの旨味との相乗効果が大きすぎて、舌が疲れてしまう点があります。

強い存在感のシャリに合わせた仕事をメインに組み立てており、塩気と旨味を中心とした構成なので、途中に柑橘類の酸味を用いたタネや生姜や大根を用いた薬味を活用すれば印象が変わるかなと感じました。

 

最も、赤酢を用い存在感の強いシャリと熟成タネは昨今のトレンドであり、そのようなお店の中では高いレヴェルにある事は間違いないので、途中、構成を「外す」事をされると更に良くなるかなと言う感想です。

 

僕はお茶で頂きましたが、お酒と合わせた方が満足度が高まるかもしれません。

僕は鮨店では日本酒しか飲みませんが、もしかするとワインとも合うかも…と感じました。

 

あと、最後に一つ改善点を挙げるならば、8人一斉スタートで握りまで何と40分掛かった事があります。

米を炊きシャリを切られていたのかと推察しますが、流石に間延びしてしまう長さなので、来店に合わせて調整される事を切に願います。

 

この度、頂いた酒肴と握りは下記の通りです。

他のお客さんの迷惑にならないよう質問は控えめに行いましたので、仕事には僕の推察も入っております事をご容赦ください。

菊鮨さんの握りの詳細

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ホタルイカ

塩が振られているが、そのままの方が良いかな。

ただ、ホタルイカは富山では3月から解禁となるものなので、随分と早いタイミングで頂けたのは嬉しい。

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梅の茶わん蒸し

梅の酸味が強いので、使用量を下げて卵の甘みを立たせた方がベター。

あと、「す」が入っていたのは気になった。

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甘鯛

昆布〆。かなりねっとりした食感に強い甘みが滲み、熟成を掛けているのは明らか。

一般的な一貫目の白身とは全く異なる名刺代わりの一貫目。

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アオリイカ

ゴワッゴワッと独特な食感(良い意味で)があり、甘みが強い。

甘みによってアオリだと推察しつつ、食感が特有なので伺ったところ、アオリの耳の部分を使用しているとの事。

力強い食感だが、細かい包丁が奏功し歯切れは良い。

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2日寝かせたもの。

かなりねっとりとした食感で、旨味が強い。

「寝かせる」仕事よりも「熟成」に近い仕事。

まるまる48時間超だろうか。

鮃の「食感」と「香り」ではなく、あくまでも「旨味」をシャリの酸味や香りと合わせる仕事。

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これもねっとりとした食感で、熟成により鰹固有の酸味を消している。

赤酢の旨味と合わせており、ふわっと燻香が香る。

この鰹はかなり独創性が高い熟成の仕事。

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鮪中トロ

湯霜にして軽めに漬けている。

非常に強い旨味と共に香りや酸味も同居しており、これは良い!

赤酢のシャリともピッタリ合っている。

産地を伺ったところ、壱岐。

更に驚いた事に、なんと20日も熟成しているそう。

1週間前後を標準として、10日~14日の熟成は体験した事があるが、20日は凄い。

鮪の良いところが残っている点に改めて驚嘆を覚える。天晴!

ただ、頂いた後、お茶の差し替えが欲しかったな。

江戸前で鮪や強い味の魚の後にお茶を替えるのは定石…。

このあたりは口煩いかもしれないけれど、若手職人さんも徹底して欲しいところ。

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小鰭

天草産。かなり強めの〆加減で、酸味も強め。

〆の過程の脱水もさる事ながら、酢に漬ける時間が長いのかも。

古典的な江戸前の〆に非常に近いが、こちらの赤酢のシャリに合わせている。

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赤貝のひも

これは非常に良い。

旨味、香りも秀逸で、産地を伺ったところ豊前海(周防灘南部)。

初めて頂く味わいの赤貝で、嬉しい出会いだった。

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五島産。

脂のノリはもうちょいだが、〆が良い。

鮮度(ぷりぷり感)を貴ぶ地域ゆえの〆方と思わされる、

食感を独特し、鯖の香りも気持ち良く伝える〆加減。

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帆立

低温で火入れし、塩を当てて3日置いた仕事。

オリジナルの仕事だが、食感が素晴らしい。

繊維がサラッとほどけ、とろけてゆく。

非常に爽やかな印象を与える帆立だ。

香りは香ばしく、煮ツメはサッパリ(だが、決して薄いわけではない)。

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熟成した後に湯霜にして漬けた仕事かと思われる。

ねっとりした甘みだけでなく、ふわっと残る酸味が良い。

海胆 ※手渡し

歯舞産。明礬の収斂味が気になるが、海胆と赤酢の相性は良い。

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熟成による強い旨味に強い燻香を付けた面白い仕事。

スモーキーな余韻が続くので好き嫌いが分かれる事は必至だが、独創性は高く、既存の仕事へのアンチテーゼとも取れる味わい。

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玉子

表面の香ばしさ、外側のみっちり感、中心のしっとり感のコントラストが印象的。

甘みはそれほど強くなく、この後に控える水菓子との役割分担が出来ている。

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赤貝 追加

ひもが美味しかったので、ボディを追加。

意外にもひもの方が鮮烈な印象を与えてくれたが、やはり美味。

包丁の入れ方も良い。

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水菓子

白ワインゼリーにブラッドオレンジとキウイ。

白ワインの利かせ方は穏やかで、果物の酸味が爽やかに締めてくれる。

 

お会計は5,200円(税抜価格)でしたので、追加の赤貝は700円。

内容を考慮すると満足度は高く、お昼であっても微塵の手抜きも無い。

親方の鮨ならびにお客さんと向き合う姿勢に感銘を覚えました。

色々と書きましたが、将来的に九州屈指の鮨店となる事は間違いないかと思います。

今度は夜にお伺いして、親方の技を余すところなく体感したいと感じました!

菊鮨さんのお店情報

店名:菊鮨(きくずし)

シャリの特徴:米酢と赤酢の2種類を使用。赤酢のシャリは非常にパンチのある味わい。温度管理が良い。

予算の目安:予算の目安:昼4,500円〜、夜10,000円~ →昼夜19,800円 →昼夜24,200円

最寄駅:大野城駅から750m

TEL:092-575-0718

住所:福岡県春日市春日公園3-51-3

営業時間:12:00~14:00、17:00~22:00

定休日:月曜

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