すしログ No. 142 鮨麻葉@西麻布

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東京に数多ある若手職人の鮨店の中でも、気になっていたお店。

ご主人の塙直也氏は30代後半ですが、17年の修業を経て、2014年8月にお店をオープンされました。

 

お店は西麻布の落ち着いた一角にあります。

かおたんラーメンのすぐそば。

お店のドアはなんとサッシで、外観の普請は高級ではありません。

しかし、中に入ると対照的に寛げる雰囲気で、意外性を与えます。

店内は7席のカウンターのみで、控えめなダウンライトは明るすぎず暗すぎず適度。

人心地つけるとともに、ご主人の一挙手一投足を眺めることが可能です。

 

ご主人の握り方は非常に特徴的です。

あたかも鮨漫画の名作・きららの仕事に出てくる職人のような、やや演技掛かっているとも見えるフォームです。

カッコ良いけど、果たしてシャリはどうだ!?と頂いてみると、それが、ほどけ加減が良くて美味い。

手数の少ない小手返しで握られる事もありますが、何れにせよ、最後に正に掌で「握る」ようなプロセスが入るため、

一見すると硬くなりすぎちゃァいないか?と懸念するものの、頂いてみるとそれが杞憂であることに胸をなでおろしました。

極めて個性的な握りですが、米一粒一粒のほどけ加減は良好です。

 

シャリは赤酢で酢が立っており、塩気はそこまで強くなく、結構硬め。

とかみ程には赤酢が強くなく、すし通程には硬くない。

独特のバランスを持っているように感じました。

 

なお、こちらのお店は握りと酒肴が混ざる例のスタイルとなります。

僕は個人的には苦手なスタイルですが、こちらは混合となるのは前半のみで、握りが中心となっており、酒肴も味わい的に強すぎないため、自然な流れに感じました。

握りに集中できる範囲での混合スタイルです。

 

また、お客に跳ね返らない仕入を行っておられる点も素晴らしい。

昨今ではピンのタネを仕入れつつ、その分高額なお勘定を強いる新店が多過ぎる。

今や外資もお金に糸目を付けずに参戦してきており、鮪を中心に海の資源も思っている以上に深刻な状況です。

よって、今後の鮨店は目利きの力と仕事の精度が更に求められるようになるのは必至。

鮨はあくまでも「仕事」なので、独自の視点で仕入れを行っているこちらは頼もしい。

正直なところ仕事によっては(鮨マニア的に)気になるポイントもありましたが、今後、更なる進化が楽しみなお店だと思います。

仕入れておられる日本酒の銘柄も面白く、費用対満足度は非常に高いお店です。

頂いた酒肴・握りは下記の通りです。 

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白魚

子持ちの白魚で、食感が楽しい。 

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流石に時期的に脂が弱いが、鰯の香りを活かす〆方。

サイズ的に酒肴よりも握りで頂いてみたかった。

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ガリ

甘みがあり、食感はシャキシャキで、生姜の辛味も残している。

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桜鱒

日本海の本物の桜鱒。

それを桜の葉の香りを移した桜〆で。

桜の香りがスッと立ち、嫌みにならない内に消えてゆく。

鱒の旨味はねっとりと凝縮している。

お任せの鮨店で最も重要な一貫目に個性的な握りを配置されているが、本質を捉えておられる事を確信する握りであった。

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牡蠣

佐賀県・住ノ江の牡蠣。

歯切れが面白く、細くプツリと切れる。

香りは上品で、清々しい磯の香りが余韻としてたなびく。

若手職人の鮨店で頂く牡蠣は、新鮮な発見があって実に興味深い。

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鹿児島県産の初鰹で、5kgとかなりの大型。

なお、鰹は2kg前後を小型、3kgほどが中型とされており、大体4kg以上が脂のノリが良い模様。

初鰹の爽やかな酸味が心地良いが、何よりも藁の燻香のバランスが良好。

お弟子さんがいないのに、乱れが無いのは素晴らしい。

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泉州水茄子の浅漬け

初物です。

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酒肴三種盛り

ホヤ、鰹酒盗、タラコ。

お酒を飲めと言わんばかりのラインナップだったので、注文(笑)

鮨店でホヤは匂いが強くリスキーだが、鮮度が高いためクセは無し。

鰹の酒盗は塩気を強く利かせ、フレッシュな肝の食感も楽しめる。

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真子鰈縁側の串

縁側の串焼きとは、豪勢。

レアに火を入れ、香りがさらっと漂う。 

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ミル貝

愛知県。特徴的な包丁を入れており、香りの伝達や歯切れが良い。

スダチは少し強めか。 

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太刀魚の焼きもの

千葉県・竹岡。しっかりと太刀魚の香りが感じられ、脂のノリも中々。

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メロンの漬物

出汁をバッチリ利かせた漬物。 

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鹿児島県・出水。一本釣りの根付き鯵。

脂が旨く、濃厚かつ上品。

良い出水の鯵は脂のパンチがありつつ、サラリと流れる。 

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金目鯛

千葉県・銚子。塩で軽く〆て、5日寝かせたもの。

食感はプリっとしており、旨味の余韻が長い。

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鮪中トロ

和歌山県・那智勝浦。130kg。5日寝かせたもの。

脂のキレが良く、穏やかな酸味と香りもある。

筋が多少気になったのが残念。

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海老

肉厚で、やや強めの火入れながらに甘みが立つ。

結構好きな火入れ加減。

ただ、個人的に残念なことに、海老にスダチは不要かと思う。

海老にスダチやオボロなど、余計な味を付加するのは好きではない。

海老本来の甘み、香りこそが海老最上の甘み、香りだと考える次第。

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鮪赤身漬け

漬け加減は穏やかで、凝縮された鮪の香りを楽しめる。

聞けば、4時間ほどの漬け加減とのこと。

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バフン海胆

少しミョウバンの苦味が気になる。 

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蛸の柔らか煮

神奈川県、淡路と並んでブランドである佐島の4kg。これは絶品。

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蛸のぬめり取りには塩、大根、片栗粉など色々と言われているが、こちらは不使用。

巨大な真蛸をひたすらぬめりを取り続け、じっくりと火を入れることで、

感動的な柔らかさと香りとなっている。

滅多に出会えないレヴェルの柔らか煮であった。

 

海胆 ※手渡しのため、写真なし

高級ブランド・はだての海胆を使用。

驚くべきことに、惜しげもなく箱ごと温度を戻されていた。

海胆は温度に弱い(=溶ける)ため、温度を戻す職人は少ない。

その上、高額な海胆ならば尚更。

シャリと温度を合わせ、旨味を感じやすい温度となった海胆は素晴らしい。

 

虎河豚白子 ※手渡しのため、写真なし

山口県・萩。これも白眉。

火入れが素晴らしく、とろっと旨味が横溢する。

さらにシャリとの相性も良く、互いに補い合うところが仕事の完成度を物語る。

白子の甘みとシャリの酸味や塩気が引き立てあい、異なる旨味が協奏。

 

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巻物

先の鮪大トロとはだての海胆をたっぷり巻いた太巻き。

大トロは炙っており、初音鮨の太巻きを思わせる。

薬味は沢庵、白胡麻、大葉。

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蜆の潮汁。

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玉子

しっとりした食感に、甘みがほんのりと漂い、海老を嫌み無く香らせる。

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王道を行くカステラ玉子ながらに完成度が非常に高い逸品。

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シャーベット

 

以上、酒肴複数と握り10貫、太巻き、玉子、椀を頂き、ビール半分と日本酒2合で、17,000円チョイ。

味の全体像は冒頭に記載したとおりですが、やはり僕は15,000円前後で本当に美味しい鮨を求めていきたいと再認識しました。

再訪して〆の仕事を体感したいと思います。

 

ちなみに、飲んだお酒はアウグスビールの無濾過ピルスナー、鶴齢特別純米山田錦、飛露喜吟醸生詰、鍋島純米吟醸三十六萬石、酒屋八兵衛山廃純米無濾過生原酒。

 

おまけ(北井真衣氏の「あたまおちょこ」)

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店名:鮨 麻葉(すし あさば)

シャリの特徴:赤酢で酢が立っており、塩気はそこまで強くなく、結構硬め

予算の目安:15,000円~20,000円

最寄駅:乃木坂駅から560m

TEL:03-3413-0488

住所:東京都港区西麻布1-4-35 レ・フルール西麻布102

営業時間:18:00〜22:00

定休日:不定休

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