すしログ日本料理編 No. 203 千松しま@塩竃(宮城県)

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綺羅びやかなお店よりも渋いお店が好きな、すしログ(f:id:edomae-sushi:20201002142555p:plain@sushilog01)です。

さて、こちらは塩竃の住宅地にあって全国から食通を惹きつける名店です。

「塩竃にあるのに松しま?」と思われるかもしれませんが、もともと松島にあった事と、ご主人が松島ご出身であるための店名となります。

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お店は塩竃の高台にあるため、眺望は抜群です。

千松しま眺望

訪問の前に松島を散策していると、感慨がひとしお深いように感じます。

 

ご主人の色川秀行(いろかわひでゆき)さんは京都の名店「味舌(ました)」さんで修業された方。

「味舌」は滋賀の「招福楼」の流れを汲む懐石料理店なので、技術は生粋の日本料理仕込みとなります。

その結果、全国でここだけの味を生み出す事に成功されています。

塩釜湾や金華山の上質な食材に京都仕込みの技が光り、繊細ながらに存在感のある御料理に仕上げておられます。

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ちなみに、現在も「2組限定・完全予約制2人以上」のお店ですが、2000年前半までは一般的に知られていないお店だったそうです。

ネットのスコアや評判などは本質に関係無く、名店は名店だと断言出来る例ですね。

千松しまさんの御料理の概観

自身が感じた御料理の特徴としては、写真では伝わりにくい迫力があると言う事。

一見すると素っ気ない御料理でも、味が複雑で、味覚が緻密に構成されています。

冒頭の御料理から調理の手数が多く、それでいて素朴かつ端正に纏められています。

豪奢ではないが華美。

日本料理の魅力・本質を見た目と味の両面で伝えてくれる御料理です。

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系統としては、東京の日本料理が好きな人よりも、関西の日本料理が好きな人の方がヒットするかもしれません。

それはご主人の経歴だけでなく、使用する食材に「分かりやすい高級食材」が使用されていない点からも言えます。

まあ、最近は関西でも「分かりやすい高級食材」を使用するお店が増えていますが、千まつしま・色川さんの御料理は、地の旬の食材を如何に美味しくするか?に収斂されており、食材を使う事自体が目的化されていません。

ゆえに、食材の味と調理の味が緻密に一体化しています。

下品な話で恐縮ですが、この内容で税込11,800円とは信じられません。

調理の手数を推察すると極めて良心的な価格であり、こう言った御料理を頂くと、都会の35,000円税サ別のようなお店で食事をする気は雲散霧消してしまいます。

30代でその事に気が付けて、資産形成上良かったと心底思いますね(笑)

まあ、それは冗談ですが、こちらのような御料理を頂くと、日本料理の魅力と本質を再認識します。

若い日本料理人の方にも訪問してもらいたいと心底思います。

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この度頂いたお酒

エビス中瓶、阿部勘・亀の尾純米吟醸、浦霞・生一本特別純米、乾坤一

なお、終盤になってからお高めのお酒は流通量に少ないレア日本酒である事に気づきました。

今度お伺いする時は、良いお酒を頂こう…

千松しまさんの御料理の詳細

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カボチャ豆腐

大豆の風味とカボチャの風味が一致したカボチャ豆腐もさる事ながら、カボチャのジュレの濃密な風味に魅了される。

カボチャの甘みと涼やかな見た目が夏の先付として印象深い。

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花ミョウガの寄せ、らっきょ、椎茸、百合根、モロッコインゲンとズッキーニ

花ミョウガは香りと酢の酸味で清涼感を与えてくれる。

百合根は甘みと香りが良く、梅肉がアクセントに。

他もさりげなく手が込んでいて、香りを楽しませてくれて、爽やか。

季節感を穏やかに愛でる事が出来る。

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ハゼの天麩羅

走りのハゼで、ご主人自ら釣ってこられたもの。

小ぶりでも香り良く、旨い。

揚げ方も抜群で、ホロッ、しっとり、さらりとほどける。

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ハゼの骨せんべい

香ばしくてお酒が進む。

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鮑水貝

伝統的な御料理!鮑はサクッと切れた後、ふるふるっと小刻みに揺れて、コリッと千切れる。

残るのは、爽快な香り。

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キリッと冷えていて爽やかで、塩気が素晴らしい。

肝は生で頂くため、爽やかな香りと磯の強い香りを味わえる。

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椀種はトキシラズで、揚げて油抜きをした冬瓜、粟餅、

吸い地は鰹がキリッと利いていて、塩気は穏やかで、優しいまろやかさが底を支えている。

トキシラズは旨味が強い。

個々が出すぎる事が無く、塩竃で頂けるとは思いもよらない、秀逸な味わいの椀。

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お造り

メイタガレイのミョウガ和え、甘鯛の昆布〆、鮪トロ、アオリイカ、ワタリガニ。

調味料は煎り酒と濃口醬油。

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日本料理店の刺身で、仕事があるお店は嬉しい。

甘鯛の昆布〆の加減は上品で、脱水も香りも旨味もコントロールされていて、食感はむっちり。

メイタガレイは軽い焼き霜のようで香ばしい。

ワタリガニは甘みが強く、香りも良い。

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油もの

丸茄子、車海老、ギンポウ。

それぞれの魅力が引き出されているのが嬉しい。

茄子の甘みと香ばしさ、ギンポウの風味、車海老の甘みと香り、

餡は出汁と塩の塩梅が良く、甘みが極めて抑制されていて旨い。

出汁は鰹の酸味が活かされている感じ。

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胡麻豆腐

他に無い味わいの胡麻豆腐。

非常にむっちりした食感で、大変香ばしい香り!

それでいて澄んだ後味。

これは鮮烈。

胡麻は苦みが出ないギリギリまで焙煎が掛かっている。

聞けば、胡麻は鍋を直火に当てて40分以上練っているそう。

凄い手間が掛かっていて、その手間暇が味に実現している銘品だ。

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炊き合わせ

メヌケ、タケノコ、フキ、ジャガイモ。

メヌケはぶりん!と躍るような食感と共にゼラチン質が口に広がる。

これも甘みが極めて抑え目で嬉しい。

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お食事

アカニシガイの炊き込みご飯。

肝も使用している。

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アカニシガイは身の旨味が強く、香りも良い。

コリコリした食感も気持ち良い。

生で頂くよりも旨味が強く、これは新発見。

ワカメや生姜も効果的にアクセントになる。

味噌汁は海老頭とふのりを使用したもの。

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水菓子

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餅粉の抹茶饅頭。

餡は粒餡で、甘みの塩梅が良く、水の良さも相まってスッキリと楽しませてくれる。

異なる季節にお伺いしたいと心から感じる御料理でした。

滋賀県・大津の行楽庵さんのような、ご当地で頂く日本料理の喜びに満ちています。

千松しまさんのお店情報

千松しま(食べログのリンク)

店名:千松しま(ちまつしま)

予算の目安:おまかせ11,800円

最寄駅:本塩釜駅から1,500m

TEL:022-362-8771

住所:宮城県塩竈市長沢町15-1

営業時間:12:00~14:00、17:30~22:00

定休日:不定休

 

修行先、京都・味舌さんの記事

 

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2 COMMENTS

nihombashi

おはようございます。大変参考にさせていただいております。ところで、今回の「千松しま」さんの住所が、別の鮨店のものになっております。お時間のある際に是非、修正くださいますようお願いします。

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edomae-sushi

nihombashiさま
ご指摘ありがとうございます!これは失礼致しました。
お店にも読者の方にも悪いので、訂正致しました。
今後とも応援頂けましたら幸いです!

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