すしログ日本料理編 No. 196 江戸前晋作@本郷三丁目

江戸前晋作

こちらは2016年10月のオープンから、人気をぐいぐいと高める天麩羅店です。

かつては6,400円のコースや1,300円のランチも提供されていたようですが、現在は15,000円のお任せ一本で19時一斉スタートのシステムを採り入れておられます。

親方は修行経験無しで、独学で技を磨いておられる方。

特にみかわ是山居の早乙女親方を心の師とされており、足繁く通って勉強されているそうです。

お店は本郷三丁目の駅近くにあって街に馴染んだ店構え。

居抜きの店内は落ち着いた割烹の雰囲気です。

江戸前晋作さんの概観

さて、結論から申し上げると、親方の天麩羅は独学とは思えない程の完成度です。

しかも、技術が高い上に十分な個性もあります。

まず、一品目の車海老を頂いて唸りました。

個性を裏付けている要素は、天麩羅の衣の食感と火入れのバランスの良さ。

小麦粉をマイナス60℃の冷凍庫で保管して揚げる天麩羅はグルテンの生成を抑え、粘り無くサラッとしておりサクッと弾けます。

車海老はレアに仕上げ、穴子は過脱水まで追い込む。

両極端の技を共に高水準で実現しており、「蒸し」に加えて、「焼き」と「脱水」を使い分ける手練れ。

この手法は正に早乙女親方の技ですが、車海老については自家薬籠中のものとされており驚きました。

ただ、技術とセンスがあるだけに勿体無いと感じる点も散見されます。

こちらの天麩羅のお任せは食後感が軽いと言う特徴があり、それは魅力の一つなのですが、提供に3時間近く掛かる点は食後感が軽い故に長過ぎると感じます。

食事の時間よりも待ち時間の方が圧倒的に長いので、ノンアル派には少々辛いかもしれません。

アラカルトではないコースの場合、お客は食のペースを完全に握られる事になります。

本当に器用な職人さんはお客のリズムに合わせて提供スピードを変えるもの。

個人的に、回転制のお店でもお客ごとに調整する事は必要スキルだと思います。

そして、所要時間が長い事により、構成力が弱いように感じてしまいます。

構成力は、使用する食材の組み合わせに加えて提供テンポ、味覚の起伏などによって組み立てられますが、割と穏やかなまま終わる印象です。

ビジネス的には一回転でお酒を飲んでもらった方が良いのは分かりますが、職人的には回転を増やして数をこなした方が将来の糧になるのではないか…?と感じました。

昔の職人さんはお好みとおまかせを同時にさばいていたものなので。

回転数を増やすのは難しいかもしれませんが、提供する時間を調整し、構成力を高めると、センスを十分に発揮できるだろうと感じました。

以上、センス溢れるお若い職人さんだからこそ、感じた事を率直に述べさせて頂きました。

また、完全一回転制のお店だからこそ重要な事なので。

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この度頂いたお酒

水尾・特別純米金紋錦870円、千代鶴・純米790円、惣誉・生もと純米吟醸1,210円、十旭日純米1,150円、満寿泉・VINTAGE2007 1,800円

江戸前晋作さんの詳細

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車海老(サイマキ)

一品目から驚嘆する火入れ!

衣は極薄で、バッチリレアに仕上げ、海老の甘みを引き出している。

そして、2尾目で火入れを変え、更に極レアに仕上げる手練!

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2尾目は生感が強い透明度の高い身だが、熱は入っており食感と甘みを同時に楽しめる贅沢な逸品。

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車海老の頭

衣に香ばしさを加える揚げ方で、香りの強い海老の頭に合わせている。

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5日寝かせて使用。

身が凝縮してるいけれど、鱚らしくホロッとほどける。

淡雪のような食感ではないが、天麩羅の鱚としての食感を残しており、新たな表現に成功している。

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アオリイカ

スミイカが旬の時期にアオリイカとは驚いたが、更に6日寝かせたもの。

寝かせる事で増幅された甘みは勿論、独特のもっちり食感も面白い。

スミイカとは異なる面白さを技術で表現している。

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コシアブラ

香りがしっかりで、コクもまた強い。

またまた超軽やかな衣でサクッと弾けて溶ける。

苦みの余韻が爽やかに漂う。

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白魚

3日寝かせ、軽く昆布〆した白魚。

昆布による脱水感が面白い。

産地は赤穂との事。

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蓮根

香りが強く、甘みも引き出されている。

衣は大変香ばしく仕上げ、コントラストが素敵。

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小柱

昆布〆。

昆布由来の旨味と小柱自体の旨味が強烈。

火入れも良い。

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海胆の大葉巻き

海胆も昆布〆に。

〆で軽く脱水されており濃密に感じる。

旨味が強いが、海胆のミョウバンによる収斂味を感じた。

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穴子

きめ細かい繊維質で、しっとり、ほろりとほどけゆく。

早乙女流のような過脱水はせず、衣も細やかでサクサク。

穴子の野趣がほんのりふわっと広がる。

産地は対馬のようだが、香りの活かし方から内海のものも頂いてみたくなった。

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茄子

ペーストを通り越して液体のようなトロトロ茄子。

大変面白い試み。

ただ、皮に包丁を細かく入れているものの、終始存在感を主張し、口に障った。

厚みのある茄子を用いた方が魅力が上がるのは間違いない。

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椎茸

食感、香り、旨味の全てが焼き椎茸のようで、香ばしさは焼き以上。

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鮪茶漬け

胡麻ダレと煎茶、鮪の酸味が織りなす味わいは魅力的。

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鯛茶漬けは鯛の風味が飛びがちだが、鮪は一体感が高い。

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これはこれで美味しいが、個人的には天麩羅店ではかき揚げを食べたい!

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水菓子

抹茶葛餅。

葛粉のみならずわらび粉をブレンドした餅は食感が大変良好。

抹茶の苦味と香りも活きている。

しかし、蜜の甘みが強いので、これは抑えた方が良いだろう。

ご主人が自ら言う通り、発展途上にあるお店だと思いました。

しかし、抜群のセンスをお持ちなので、天職である事は間違いないでしょう。

今後精進されて、数年後に頂く日が楽しみです!

江戸前晋作さんのお店の情報

江戸前晋作(食べログのリンク)

店名:江戸前晋作(えどまえしんさく)

予算の目安:おまかせ16,500円(税込)

最寄駅:大江戸線・本郷三丁目駅から100m、丸の内線から180m

TEL:03-5615-8728

住所:東京都文京区本郷4-2-4 加藤ビル1階

営業時間:19:00入場の一斉スタート

定休日:日曜

※完全予約制、一斉スタートのため遅刻厳禁

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