すしログ 〜The Encyclopedia of Sushi〜

全力で鮨の魅力を伝えるブログ!日本料理、郷土料理、和菓子の名店も紹介します。Since 2015

すしログ日本料理編 No. 192 焼鳥茜@神楽坂

焼鳥茜

ハイレヴェルな焼鳥店の「店舗数」で言うと、大阪よりも東京の方が多いのではないでしょうか。

これは大阪の焼鳥職人さんご自身の口から度々聞くところです。

しかし、大阪は東京に比べて焼鳥を日本料理の枠組みで捉え直し、新たな料理として再構築するお店=創造性に富んだお店が多いと感じます。

ベテランのお店だとかしわや闘鶏さんが鮮烈な印象を与えてくれますし、若いお店だと市松さんなどの名が瞬時に浮かびます。

大阪らしく「おもろいお店」であり「変態的なお店」の勢いには、目を瞠るものがあるように感じます。

大阪でそのようなお店を巡る中、東京でも変態的な焼鳥店を探しておりました。

そこで出会ったのが、こちらの茜さん。

親方は自らを「ひねくれもの」と仰り、ひねくれっぷりは紛れもなく御料理に表れております。

…もちろん、素晴らしい形を以て。

 

親方は湯島の名店・鳥恵で修業された経歴を持つそうです。

つまり、系譜で言うと蒼天の流れを汲むお店となります。

しかし、驚嘆に値する点は、オープンから3年ほど(2016年7月11日~)にもかかわらず、既に個性を確立されており、一串の中にご自身の料理を表現されているところ。

焼鳥は通常(おおまかに言って)、串打ち、味付け、火入れで構成され、

あくまでもその中で技を表現するところが面白く、職人芸たる所以。

ただ、更に異なる調理法を加える事で、

新たな焼鳥の可能性が広がるのは間違い無いと確信しております。

 

例えば、親方・林裕太さんが作る【ねぎま】。

通常はもも肉で作るところ、胸肉を用い、皮を合わせて焼き、胸肉に合った葱を選択する。

食材の組み合わせのセンスと火入れの妙が合わさり、新たな【ねぎま】を生み出すのに成功しております。

決して奇抜な事をせず、王道の串を非凡な料理に仕上げるセンスは見事!

頂いていて、次の串もしくは一皿に胸が躍る、大変魅力的なコースとなっております。

f:id:edomae-sushi:20191225191228j:plain

お店は神楽坂と江戸川橋の間あたりにあり、大変落ち着いております。

店内には厚い木のカウンターが鎮座し、梁は網代と、日本料理店の雰囲気です。

BGMは無いので、落ち着いた空気が流れ、落ち着きます。

排煙装置の性能も高く、煙と煙臭さは皆無。

 

なお、店名「茜」にちなんだ調味料やお酒は随所に散見されます。

例えば使用する鶏はつくば「茜鶏」で、塩はアンデスの天然紅塩「茜塩」。

訪問の際には茜アイテムとの出会いと由来を聞かれるのも楽しみにされてください(笑)

なお、つくば茜鶏は茨城県の銘柄鶏となり、出荷日齢は平均80日で、飼育方法は平飼いです。

 

この度頂いたお酒

ハートランド、出羽鶴酒造・J-CRAFT茜かもしか純米吟醸無濾過生酒、

いづみ橋・生もと黒蜻蛉2016BY、アンヌ・グロ・ブルゴーニュアリゴテ2018、

宝酒造・石焼き芋焼酎・石茜

 

焼鳥茜さんのおまかせコース
・先付:比内地鶏金柑の燻製
・酒肴盛り合わせ:深谷葱とミニトマトのぬた、赤軸ほうれん草の胡麻酢和え、比内地鶏砂肝の銀皮
・彩り野菜のサラダ
・茜鶏笹身のさび焼き
・茜鶏胸肉のねぎま
・甘恵黄味(あまえぎみ)トマト
・自家製薩摩揚げ
・高原比内地鶏のもも~すね
・愛知鴨の胸肉、九条葱
・切り株えのき
・高原比内地鶏のハツ
・高原比内地鶏の手羽先、南蛮漬け風
・高原比内地鶏のつくね、初卵
・一口ご飯
・皮(縁側) 追加
・せせり 追加
・親子丼、鶏スープ 追加

 

焼鳥茜さんのコースの詳細

f:id:edomae-sushi:20191225191233j:plain

高原比内地鶏金柑の燻製

山葵はバッチリ本山葵で静岡産、海苔の佃煮とともに。

濃厚な味わいと上品な薫香が堪らない。

今後の期待を否応無しに高めるズルい先付。

f:id:edomae-sushi:20191225191240j:plain

深谷葱とミニトマトのぬた、赤軸ほうれん草の胡麻酢和え、比内地鶏砂肝の銀皮

どれも美味しく、ぬたと胡麻酢和えは酸味が利いている。

ぬたの深谷葱は炭火焼きにしている。

砂肝の銀皮は風味が良く、コリコリ、シャクシャク。

f:id:edomae-sushi:20191225191244j:plain

彩り野菜のサラダ

自家製の柚子ドレッシングは柚子の風味も酸味も丁度良い。

コース内で野菜を摂れるのは素直に嬉しい。

f:id:edomae-sushi:20191225191255j:plain

茜鶏笹身のさび焼き

火入れの腕前を体感させる一串目!

胸よりも酸味が穏やか。

f:id:edomae-sushi:20191225191259j:plain

茜鶏胸肉のねぎま

これが前述の逸品。

胸肉を皮と合わせ、大葉を噛ませて焼き上げており、技あり!

胸肉らしいサッパリ感を楽しませつつ、皮で脂と風味が補強され、とは言え、繊維質のしっとり感と大葉が爽やかに纏める。

葱が細身で甘みが強く、香り高い点も良い。

全体のバランスを考える為に使用する葱の必然性まで考えられるかどうか、それが職人としての岐路だろう。

f:id:edomae-sushi:20191225191304j:plain

甘恵黄味トマト

味わいが強く、それぞれ異なる点が面白いトマト。

火入れはバッチリで、トロトロと甘みが流れ出るかのよう。

f:id:edomae-sushi:20191225191309j:plain

自家製薩摩揚げ

スノーボール(玉葱)と自家製紅生姜、鈴カボチャとクミン。

前者は玉葱の甘みと紅生姜のスッキリした味わいが相性抜群。

後者はクミンの香りに意外性があり面白い。

スパイスは脂溶性なので調理上の必然性もある。

何はともあれ、共にぷりぷりで甘みが強く、美味しい。

f:id:edomae-sushi:20191225191314j:plain

高原比内地鶏のもも~すね

ももからすねに掛けて部位を分けて串打ちしている。

皮がバリッと弾け、炭の香りが広がり、軽い苦味を感じた後に、大変強い旨味が舌を喜ばせ、力強い食感で飲み込むのを躊躇わせる。

むっちりした繊維質と確かな旨味のある脂が魅力。

これまた面白い一串。

f:id:edomae-sushi:20191225191322j:plain

愛知鴨の胸肉、九条葱

九条葱は先っぽの柔らかいところを使用しているそう。

付け合わせに和歌山の葡萄山椒を少々。

しっとりジューシィに仕上げており、香りは上品ながら鴨らしい香りを楽しませてくれる。

脂の融点は26℃程度との事だが、納得する。

f:id:edomae-sushi:20191225191327j:plain

切り株えのき

一般的なものよりも甘みが強く、香りも然り。

力強い食感が気持ち良く、意外性のある野菜。

トマトに続き野菜の火入れも巧み。

f:id:edomae-sushi:20191225191333j:plain

高原比内地鶏のハツ

旨味が強いハツで、穏やかな血の香りを楽しませる。

中に仕込まれた塩漬け黒胡椒が面白い。

乾燥モノでない黒胡椒は辛味と香りが違う。

f:id:edomae-sushi:20191225191338j:plain

高原比内地鶏の手羽先

手羽先は炭焼きの後に身をほぐし、南蛮漬け風に酢を利かせて和えている。

サッパリとリセットしてくれる小鉢。

f:id:edomae-sushi:20191225191341j:plain

高原比内地鶏のつくね、初卵

コースはここまでとなり、最後を締めくくる一品。

つくねは軟骨入りで食感が良く、初卵は非常に濃厚。

f:id:edomae-sushi:20191225191351j:plain

一口ご飯を頂け、混ぜてミニTKGにすると嬉しさひとしお。

お米と卵の相性の良さを痛感させ、香ばしいタレと言う点も良い。

お米は硬めの炊き加減。

f:id:edomae-sushi:20191225191355j:plain

せせり

ぷりんぷりんと気持ち良い食感で、脂の粒子は大変きめ細やか。

せせりとして、脂はヘヴィではなく、食感も豪胆過ぎない。

f:id:edomae-sushi:20191225191411j:plain

皮(縁側)

訪問当日は首皮ではなく縁側と呼ばれる皮を使用され、一串あたり2.5羽分を使うとの事。

焼き加減はカリカリ過ぎず、くにゅっとしつつジューシィ。

皮は焼き込まない場合、生々しい食感や生臭みが残る可能性が高いので、敢えて穏やかな火入れで攻めるとは、チャレンジング。

脂は全くクドくない。

f:id:edomae-sushi:20191225191401j:plain

骨抜き手羽

柚子を噛ませると言うか、打ち込んでいる点が個性的。

まずはバリッと皮が弾け、濃密な粒子の脂がじゅわっと溢れ出て、あくまでも上品に柚子の香りが引き締める。

実に良い仕事。

f:id:edomae-sushi:20191225191421j:plain

親子丼

高原比内地鶏のガラと野菜を90℃程で12時間煮出した鶏出汁を使用。

よって、旨味が非常に強く、一体感も抜群な親子丼。

鶏はむっちりしており旨く、

皮がカリッと仕上げられているのは焼鳥店の親子丼の美点。

炭の香ばしさも加わっている。

f:id:edomae-sushi:20191225191426j:plain

鶏スープ単体で頂くと、かなり濃密である事を実感。

しかし、白湯のようにドロドロしておらず、ゼラチン質に満ちていながらスッキリと上品。

 

最後まで本当に面白いコース内容でした。

お会計は、5,000円のおまかせに串2本追加、親子丼半分を追加して、お酒はビール(ハートランド中瓶)半分、日本酒1合、ワイン1杯、焼酎1杯で12,500円(一人分換算)。

お酒部分のお値段さえコントロールすれば、様々な予算帯の方が利用できると思います。

ご主人の面白い試みを、末永く応援したいと感じました。

 

店名:焼鳥 茜(やきとり あかね)

予算の目安:おまかせのみで、茜コース(12品)5,000円~

最寄駅:神楽坂駅から500m、江戸川橋駅から600m

TEL:03-6228-1604

住所:東京都新宿区天神町68 滝沢ビル1F

営業時間:18:00〜21:00(最終入店)

定休日:日曜

※完全予約制となります