すしログ 〜The Encyclopedia of Sushi〜

全力で鮨の魅力を伝えるブログ!日本料理、郷土料理、和菓子の名店も紹介します。Since 2015

すしログ日本料理編 No. 188 太華@芝公園

食事 太華

江戸料理とは?

この質問に答えられる人は、東京に住んでいる人はおろか、料理人でも少ないのが現状と言えるのではないでしょうか。

それもそのはず、江戸料理を頂けるお店自体が極めて少ないので…

京料理を中心とした関西料理(上方料理)が席巻した事で、東京では江戸料理のお店が激減しました。

この構図は、皮肉にも、関西で東京の江戸前鮨が席巻し、関西鮓が壊滅状態に陥っている構図と酷似しております。

しかし、料理とは時代の流れで淘汰されつつも、同時に研磨されて更なる魅力を放つもの。

悲観するだけでは安易で安ッぽいセンチメンタリズムでしかありません。

提供する店舗数は少なくなったとしても、いや、少なくなったからこそ、伝統を再発見し、新たな魅力を創出する料理人が出てくるのが、料理の面白さだと思います。

温故知新による革新。

今回、まだお若いのに江戸料理を追求する、

海原大(かいばらひろし)さんと出会い、江戸料理の魅力を再認識しました。

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お店は「えっ、ここに!?」と言う場所にあり、外観は素っ気ない割烹然。

知っていなければ、生活圏外の人は素通りしてしまうかもしれません。

こちらの主、海原親方は25歳の頃に料理の道に入ったそうです。

しかし、料理人としては遅いスタートであるため、「京都での修行は気が引けて止めた」との事。

その後、早くも27歳の頃に江戸料理好きを自認。

修行先が江戸時代中期(1700年~1750年頃)から続く葉山の日影茶屋であった事も要因かもしれませんが、今回訪問して御料理を頂き、お話を伺ってみて、海原さんの感性と探求心が江戸料理を志向させたと感じました。

太華さんの御料理の概観

海原さんの御料理は、江戸料理を自らの感性で「調整」した日本料理と言えます。

なにせ提供するお店が少ないのが、現在の江戸料理。

海原さんは古来の文献を読み、想像力で補足しながら作られているそうです。

また伝説のお店、なべ家の福田浩さんの薫陶を受けつつ。

結果として、その営為は稀有な個性として結実しており、「アレンジ」と言うには軽薄、「調整」と言う語の方が合うように感じました。

素材に掛ける手間は多くとも、手数は少ない調理法。

食材の持ち味を把握し、引き出しておられます。

そして、調味料、出汁も完全に「引き算」。

「引き算」と言われながら実際は「足し算」であるお店もあるので、見事な腕前だと感じます。

例えば、芝海老真薯の椀の吸い地は、江戸料理らしく昆布を用いず鰹のみ。

それでいてまろみを表現されており、寄り添う塩気すら甘美な印象を与えてくれます。

 

海原親方は朴訥で謙虚な御仁ですが、御料理にストイックに向き合っておられ、「シンプルながらに強い個性を持つ料理」を作り上げておられます。

個人的に、東京で出会った日本料理店としては、有名無名関わらず屈指のレヴェルだと感じます(ポテンシャルも含めて)。

これからのご活躍が楽しみなので、応援していきたいと思いました。

 

なお、御料理は単品でも用意されておりますが、圧倒的なオススメはおまかせ。

7,500円からご用意されており、その時々の季節を採り入れた御料理を楽しませて頂けます。

〆のお食事は、ストイックに土鍋炊きの白ご飯!

混ぜご飯、炊き込みご飯が主流なところ、実に硬派な試みです。

しかし、日本人としてメインディッシュと言える味に仕上げておられ、次回頂くのも楽しみになる、後を引く味の白ご飯です。

 

お酒は芝の地酒である【江戸開城】を何と1合1,000円で出されております。

高価に提供されるお店が多い中、実に良心的。

ただ、訪問時は敢え無く品切れだったので、他のお酒を頂きましたが…

それらも魅力的なラインナップで満足致しました。

扶桑鶴・特別純米、無手無冠(むてむか)・純米生原酒、上川大雪・特別純米。

 

頂いた御料理
・蛤鮨
・芝海老の玉子焼き
・浜防風の茹で上げ
・椀:芝海老真薯
・刺身:鰹の下駄造り
・ぜんまい、干瓢、鴨の鴨抜き
・鱚の天麩羅
・鮪の雉焼き
・お食事:白米、香の物、味噌汁
・水菓子:利休卵

 

太華さんの御料理の詳細

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蛤鮨
一品目から心をガシッと掴まれた。

蛤の潮汁と酢飯を合わせた、粋な料理。

蛤の甘みがたっぷり溶け込んだツユに、酢飯の酸味が凛々しく滲む。

実山椒がキリッと引き締める。

実にシンプル。

塩の塩梅も良い。

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玉子焼き

芝(立地)らしく芝海老の出汁と酒のみで調理。

卵の香りならびに甘みがふくよかに広がり、力強い旨味に揺さぶられる。

素朴なのにインパクトが絶大な玉子焼き!

蛤の後でも申し分ない旨味である。

最初は海老の身も古来のレシピ通り使用されていたそうだ。

今は出汁のみと、敢えて要素を引いて、御料理の存在感を強めている。

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浜防風の茹で上げ

江戸料理らしい一品。

鮮烈に走る青い香り…甘みと香りが引き出されており、軽い苦味が爽やかに引き締める。

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椀種は芝海老真薯。

海老の香りと甘みが実に良い。

そして、吸い地が美味しく、鰹出汁は限りなくまろやかで、塩気は穏やか。

枕崎の本枯節のみを用い、秀逸な出汁を引かれている。

東京らしさを感じさせつつ、それでいて繊細な、今の東京で貴重な吸い地だと実感。

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お造り

鰹の下駄造り。

醤油は岐阜の関ヶ原醤油で、香りが強く濃厚な再仕込み醤油。

塩気とともにコクがある醤油だ。

薬味は大葉、ネギ、茗荷、大根、和芥子。

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鰹の雄々しさが活きる醤油使いで、爽やかと清涼感を初夏に感じさせてくれた。

柑橘は不使用で、お酢と薬味のみで構成する潔さが江戸料理の妙味か。

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ぜんまい、干瓢、鴨の鴨抜き

ぜんまいのじゃくじゃくした食感が堪らない。

「江戸ではその辺に生えていたものだから」使用されたそう。

ぜんまいに干瓢というダブル乾物の渋い汁物でありながら、鴨はおまけにすら思える主役級の味わい。

天麩羅に合うかなと「抜き」にされている。

面白いイマジネーションだ。

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鱚の天麩羅

香りが初夏に爽快。

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鮪の雉焼き

部位は背トロなので、脂がしっかりしているが、酸味もあるためもたれない。

パンチがありつつ食後感はさらりとしている。

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お食事

お米は栃木のコシヒカリ。

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はらはらとほどけ、軽い粘りがある。

香りも良く、コシヒカリらしい甘みもある。

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香の物は蕪とその菜っぱの糠漬けで、留め椀は田舎味噌の味噌汁。

味噌の蔵元は芝浦の日出味噌醸造元との事。

白米、味噌汁、香の物で勝負できる日本料理店は、本物である。

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水菓子

利休卵。白胡麻と胡桃などを混ぜて蒸したもの。

棹物のようだが、もっちり感はなくしっとりしており、香りが良い。

 

足を運んで大切にしたい名店です。

 

 

店名:食事 太華(しょくじ たいか)

予算の目安:おまかせ7,500円ほか、猪鹿コースは要相談(仕入れによりますので)

最寄駅:芝公園駅から210m

TEL:03-3453-6888

住所:東京都港区芝2-9-13

営業時間:18:00~24:00(最終入店 22:00)

定休日:水曜

※コースは完全予約制となります