すしログ 〜The Encyclopedia of Sushi〜

全力で鮨の魅力を伝えるブログ!日本料理、郷土料理、和菓子の名店も紹介します。Since 2015

すしログ No. 311 鮨いとう@いわき(福島県)

鮨いとう

こちらは福島県いわきにある鮨店です。

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お店の外観は落ち着いており、温かみを感じる暖簾がはためいております。

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店内も同様で、過剰な内装ではなく、素朴でありつつ上品です。

実際に使用されている氷冷庫と窓が細やかに粋に感じます。

鮨いとうさんの概観

伊藤親方は福島県の港に頻繁に足を運ばれ、震災後に使用できるようになった魚を選りすぐっておられます。

お知り合いのレストランのシェフにも紹介されており、今、福島で魚を食べるならコチラである事は間違い無いと思います。

同時に、日本全国の漁師さんや仲卸さんと直接繋がっておられるので、各地の一級品も頂けます。

 

東京の人気鮨店と比肩するような一級の食材を用いつつ、お店はカウンター席6席のみで、回転制ではありません。

おまかせ一本となりますが、親方の気概が表された骨太な内容です。

 

そして、着目すべき点としては、神経〆後の熟成の見極め、調理温度の管理、素材と調理法に合わせた塩の選択など。

頂けば、個々が研究に基づき到達した域にある事が分かります。

酒肴はシンプルに出され「鮨屋のつまみ」らしさがありますが、いざ頂いてみると味はシンプルでありながらインパクトが大きい。

料理はシンプルであればあるほど美味しくするのが難しいものなので、親方のセンスに加えて、今までの試行錯誤を感じさせます。

 

シャリはミツカン山吹(赤酢)を用いつつ、あくまでも穏やか。

米酢もブレンドされている事に加えて、酒肴と同じく親方の哲学が反映されているのかと推察します。

つまり、シャリ単体で美味しさを表現するのではなく、タネと合わせることで酸味や塩気を感じさせるシャリなのかなと。

温度や硬さにブレが無いので、恐らくそうなのだろうと勝手に腑に落ちました。

シャリには瀬戸内の藻塩を用いておられ、お米は地元いわき市遠野町の古古米。


個々の完成度が非常に高く、最後まで一瞬たりともダレません。

味、提供ペースともに秀逸な鮨店だと感じました。

 

鮨いとうさんの詳細

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九絵のスープ

和歌山県串本産で、20キロのものを1週間熟成。

味付けは塩のみで、当初は塩気が強めかと思ったが、バランスは良好。

身の旨味はしっかりしており、ゼラチン質が溶け込んだスープは塩気と調和する。

串本の九絵は脂の甘さが特徴らしい(現地漁師談)。

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いくら

当日分のみ仕込み、その日のうちに使い切るそう。

皮はさらっと溶けるかのように弾ける。

醤油は上品な使用量。

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牡蠣

厚岸産。65~70℃で5分茹でた後、余熱で火を入れて、出汁に漬けた牡蠣。

調理が素晴らしく、生っぽくもみっちり感が軽くあり、しっとりした身は香りが良い。

ノロウイルスの感染リスクを排除しつつ、ほぼ生に近い楽しみを与えてくれる。

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ワタリガニ

地物の子持ち。珍しい時期だが、ここのところ獲れるようになっているそう。

旨味が強く、香りも強い!

卵はねっちりしており、濃厚な印象を与える。

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ホウボウ、鯖

付け合わせの塩はクリスマス島の塩。

ホウボウはいわき豊間産で、鯖は長崎県五島産。

ホウボウは3日寝かせており、むっちりでありながら、滑らかにほどける繊維質。

旨味も強い。

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鯖は1週間熟成させた上、〆ずに生で提供。

旨味がしっかりで臭みは無く、香りとして楽しませてくれる。

同時に、生なので皮目のブチリ感も楽しい。

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北寄貝

いわき四倉産。非常肉厚な北寄貝を醤油で炙っている。

甘みが強く、香りも抜群。

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鱈白子

60℃から40℃まで余熱で20分かけて火入れした白子。

非常にクリーミーで、薄皮が弾けて、とろける。

生よりも甘みを強く感じる気がする。

鰹出汁が程良く浸透しており、出汁と塩気の塩梅が良い。

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カマス

いわき沖。脂が乗っており美味。

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紐きゅう

紐でも香りの良い赤貝で、閖上だと感じる。

巻物で口直しとは面白い。

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ガリ

食感は強く、酢が浸透している。

辛みと甘みのバランスが良いガリ。

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容器の取っ手が可愛らしい。

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墨烏賊

肉厚な身はブチブチと千切れ、肉厚だが歯切れ良く、とろとろになってゆく。

お米の美味しさを感じさせる。

塩はフランス産の岩塩。

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真魚鰹

愛媛の人気漁師さんの…と言う事だったので、藤本純一さんの獲った魚と思われる。

バイアス抜きで頂いてみて美味しいので、藤本さんで間違い無いだろう。

6日寝かせているそうだが、旨味が圧巻で、真魚鰹の持つ脂を超える旨味の印象が面白い。

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赤貝

香りと旨味の強さで閖上だと確信。

実際にそうであったが、更に凄かった。

閖上の貝屋さんが伊藤親方の為に送っている赤貝を、何と寝かせているそう。

5日かけて塩水を吐かせながら寝かせた赤貝は、身の水分が少なくなり一回り小さくなっているが、それ故に旨味が凝縮している。

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車海老

表面のみ火入れして昆布〆にすると言うオリジナルの仕事。

食感は生っぽいぷりぷり感の中に、火入れした事によるむっちり感がほんのりとある。

昆布の香りも合っている。

車海老の甘みを引き出しつつ生っぽさも楽しませる仕事。

震災直後、福島の魚を使えなくなった際に編み出されたそう。

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セコガニ(香箱ガニ=ズワイガニのメス)

1年で約2ヶ月間しか楽しめない味を、握りで頂く贅沢!

身、蟹味噌、内子、外子をミックスしており、シャリとの一体感もある。

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相馬産。藁の強めの燻蒸香が抜群。

脂はもっと乗るとの事であり、仕事でカバーされている。

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小鰭

オボロと言うか田麩󠄂を噛ませ、甘みを加える。

〆加減はジューシィでありながら旨味が引き出されており、臭みは皆無。

仕事と田麩󠄂の調和が見られる小鰭。

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鮪赤身

産地は伺っていないが、仕入れが石司である事は知っていたので、産地を伺わずとも美味しいだろうと判断。

むっちりした身は旨味に加えて酸味もある。

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鮪中トロ

脂部分の口溶けが良く、赤身の酸味も楽しめる。

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鮪大トロ

ここでシャリを変えられ、温度を合わせる。

濃厚な旨味に加えて香りが楽しめる大トロ。

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海胆手巻き

根室(北方四島)の塩水海胆。

甘みを引き出すために寝かせているそうで、加工から5日。

それにより、香りも立つ。

これも根室の海胆屋さんが専用にパック詰めされているそう。

そして、分厚く歯切れが良く旨い海苔は有明産で、築地・丸山のピンである。

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蜆の味噌汁

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穴子

松島産の穴子で、超肉厚。

肉厚な煮穴子に煮ツメを掛けてから焼いている。

繊維質を楽しめる穴子で、食べ応えが抜群。

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干瓢

甘みがあり、柔らかなものをみじん切りにして手巻きで。

これは玉子への接続を考えた干瓢。

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玉子

ふんわり系の玉子だと素晴らしい完成度。

とろっ、しゅわっ、ふわんと、終始軽やかに。

 

必ずや再訪しようと感じました!

 

店名:鮨 いとう(すし いとう)

シャリの特徴:赤酢の良さを残しつつ巧みにブレンド。徹頭徹尾タネを活かす赤酢のシャリ。

予算の目安:おまかせ18,000円~

最寄駅:いわき駅から550m

TEL:0246-35-7066

住所:福島県いわき市平字南町73

営業時間:18:00~21:00までの入店

定休日:日曜(月曜が祝日の場合は日曜営業し、月曜が休みの場合有り)