すしログ 〜The Encyclopedia of Sushi〜

全力で鮨の魅力を伝えるブログ!日本料理、郷土料理、和菓子の名店も紹介します。Since 2015

すしログ No. 303 すしてんちじん@札幌(北海道)

すし てんちじん

札幌で若い職人さんの比較的新しいお店があると聞き、機会を逃さず訪問しました。

和喜智さん一幸さん姫沙羅さんなど、再訪したいお店も多々ありますが、評価が確立したお店よりも若手の発掘と応援を実践したいため、ご容赦を…

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親方とお話をしたところ、そもそも年齢に驚きました(笑)

貫禄がありすぎる風貌ですが、なんと31歳!

カウンター商売で貫禄は百利あって一害無しだと思います。

それでいてシャイで謙虚な印象を受けました。

オーナーがいるお店の雇われ職人さんですが、シャリも仕事も自己流で表現されております。

親方の小伊勢健太さんは北海道を代表する鮨店で修行された方。

すし善に始まり、伊勢鮨、鮨処有馬と、ザ・蝦夷前と言うべき系譜。

都内では有名店出身の若い方が新規店を出される際、修行先より「少し安い」客単価2万円以上で始める事が多いですが、こちらは上記のお店出身ながら、おまかせ1万円の一本勝負。

タネの仕入れは北海道が多いのかな?と思いましたが、酒肴から握りに移行するや否や道産食材を駆使してこられ、効果的に仕入れておられる様子。

てんちじんさんの概要

シャリは酸味も塩気も穏やかで、赤酢主体ながらにバランスが良い調味。

お米は秋田産あきたこまちを使用。

温度や硬さは丁度良いです。

お酢は横井の赤酢(與兵衛では無いとの事)、岐阜の内堀醸造・美濃三年酢、ミツカン・三ツ判山吹の三種をブレンド。

この組み合わせはマニアックだなあと感じました。

 

酒肴もオリジナリティがありつつ、握りを邪魔しないものが多い。

親方は敢えて回転制を導入されず、同時に低価格での提供を心掛けておられ、時代の流れと良い意味で逆行されております。

おまかせ1万円は額で言うと一般的にはもちろん高額ですが、鮨である事と内容を考えると大変リーズナブル。

若い人も訪問出来る、若い親方のお店です。

ちなみに、店名はオーナーが付けられたそうで、スタイリッシュなロゴも然りとの事です。

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頂いたお酒

ビール650円、日本酒は概ね900円くらいで、二世古・特別純米吟風、上川大雪・特別純米、鍋島・特別純米三十六萬石

 

てんちじんさんのおまかせの詳細

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水蛸2種の食べ比べ

北海道らしい水蛸から始まり、食べ比べと言うのが面白い。

期待感を高めてくれる演出だ。

片方はほうじ茶で煮て、もう片方は甘みを付けた要は桜煮。

双方に共通する魅力は、食感。

柔らか過ぎず、むちむちした身はぷちっと弾ける。

そして、香りを上手く残している。

水蛸で真蛸と同じ調理法だと詰まらない。

よく工夫されている。

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ガリ

冒頭からガリが登場。

新生姜を用いており、食感が良く、甘みがありつつキリッと爽やかな辛味。

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ボタン海老の内子と紹興酒漬け

(中国料理で言う)酔蝦とは!ただ、香りの嫌味は無い。

ねっちりした身はぷちりと千切れる。

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気仙沼産。エシャレット(≠エシャロット)微塵切り、ミックスナッツの燻製フレークを添えて。

鰹は酸味がしっかりしつつ、旨味も十分。

ナッツの燻香は初手から香る。

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みぞれがけ

お弟子さんから、具は椎茸、舞茸…と聞いたが、実際は海鮮の方がメイン。

 

この後、握りに移行します。

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シシャモ

なんと一貫目は初もののシシャモ!

鵡川町に行かずに済んだ(笑)

身はホロッホロで、香りが抜群。

軽く火を入れつつ、極レアに仕上げた労作。

羅臼の昆布塩と共に。

これは初手から心を掴まれ、今までに北海道で頂いた、いわゆる「蝦夷前」のタネの中でも満足度が上位。

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帆立

目の前で殻から剥かれる。

美味しいだけでなく、嬉しい。

帆立は言うまでもなく甘く、付け合わせの干し貝柱のフレークも考えられている。

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縞鯵

漬けは漬けでも、白醤油の漬け。

白醤油故に淡い風味と塩分であり、同時に漬けの時間も短いため、浸透も淡い。

しかし、身はねっちりと旨味が封印されており、漬けにする意義がある。

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食感はタフで、脂は乗り乗り。

ぶりっ!バツッバツッ!とした身から脂が溢れ出て、エシャレットの風味と一味唐辛子の辛味が引き締める。

予想通り軽く脱水しており、酢で〆る事なしない。

鰊の持ち味を殺しておらず、これは函館の梅乃寿司さんよりも遥かに良い。

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鰆西京漬け(焼きもの)

これは火入れが強過ぎてイマイチ。

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肝は卵黄、生クリームと混ぜ、黒胡椒を振って。

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鮑の味は弱く、火入れが強めの作り置きだが、低価格帯で鮑を出される心意気は素晴らしい。

だからこそ、今や一般化した調理法ではなく、独自の調理法で提供しても良いだろう。

蒸し鮑を極軽く炒って香ばしさを付与し、山わさびの千切りをあしらうなど。

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みっちり〆ており、美味い。

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金目鯛

むっちりした身で、これも脱水されている模様。

炙らずして金目鯛の魅力を引き出している。

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鮪赤身

湯霜にして漬ける古典的な仕事。

しかし、浸透は浅く、古典的ながらモダンに仕上げている。

身はみっちり、しっとり。

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鮪トロ

脂が強く風味は弱めで分かりやすいトロ。

筋に対する包丁の入れ方が良い。

産地は少し想像したが、矢張り大西洋クロマグロで、ボストン。

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小鰭

北海道でも小鰭を出されるのが良い。

かなり脂が乗っており、しっかり〆ても旨い。

身の食感はみっちりながら塩気、酸味の浸透は穏やか。

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ノドグロ(アカムツ)

島根産。つまり、錦織圭選手が「食べたい」と言ったヤツ(笑)


生を炙っているが、脂がてろってろじゃない点が良い。

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牡蠣

仕事は漬け込み。

食感が秀逸で、ホロホロホロとほどけ、とろりと溶けるかのよう。

火入れに技があり、大変魅力的な一貫。

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海胆

積丹産の名残。名残でも甘く、季節の最後に頂けたのが嬉しい。

初物のイクラとの出会いも嬉しい限り。

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岩海苔の赤出汁

北海道らしい椀種。

 

現時点で完成度が高く、個性もバッチリなので、今後が大いに楽しみです。

一つだけ、お茶が薄く、少量かつ器がガラス製と言うのはオーナーの方針でしょうか。

オーナーも鮨好きとの事ですが、鮨好きならばお茶にも配慮された方が良いかと思います(笑)

 

店名:すし てんちじん

シャリの特徴:3種類の酢をブレンドし、全てのタネにバランス良く合わせる

予算の目安:おまかせ10,000円〜

最寄駅:すすきの駅から190m

TEL:011-211-1170

住所:北海道札幌市中央区南4条西5-8 F-45ビルB1F

営業時間:17:00~24:00

定休日:日曜、祝日