すしログ 〜The Encyclopedia of Sushi〜

全力で鮨の魅力を伝えるブログ!日本料理、郷土料理、和菓子の名店も紹介します。Since 2015

すしログ No. 286 銀座 鮨 わたなべ@銀座

銀座わたなべ

大変久々の訪問となる、銀座わたなべさん。

かつて頂けなかった【鯵の棒寿司】が主目的です。

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ただ、今回久々に訪問して、渡部佳文親方の仕事の素晴らしさを心から再認識しました!

数多くの名店、人気店を巡った後に凄さを気付かせてくれる鮨店。

親方は粋な方なので初心者でも気軽に訪問できるお店ですが(実際に若いカップルも多かったです)、

鮨を食べこんでいる人ほど凄味が判るお店だと感じました。

 

話が少し脇道に逸れてしまいますが、昨今は「タネのクオリティ」を上げると共に、仕事が「上品」になっているお店が多い状況であると感じます。

それは決して悪い事ではなく、もちろん美味しいお店も多々あります。

しかし、世に言われる「タネのクオリティ」とは資本主義の論理に基づく、「人気仲卸がオススメするタネ」である事が多くなってしまっている点は残念です。

「タネのクオリティ」は重要ですが、職人は自身の眼と舌でタネを選ぶべきであり、皆と同じ仕入れを行うのは、職人としての怠慢と言えるのでは無いでしょうか?

特に夏の鮪についてはサステイナビリティの観点から見ても、国産の境港産に安易に飛び付かない方が良い事は自明です。

そして、次に、鮨の調理法。

最も分かり易いのが、「〆る」と言う調理法。

〆の中にも塩〆、酢〆、昆布〆と複数の方法があり、更に塩〆の方法も複数あります。

〆は鮨をあまり食べない方でもご存知の通り、一般的に〆すぎると魚の味を損ねてしまいます。

それでいて、〆を感じさせないと生っぽい仕上がりとなり、〆の仕事の意味が薄れてしまいます。

〆はセンスと経験がモノを言う、職人仕事の妙技。

ここで言いたい事は、現在は新店のオープンが非常に多い状況ですが、似通った味のお店が増えてきている印象…危惧を抱く次第です。

この度、渡部親方が繰り出す硬派な江戸前仕事を頂き、その思いを強くしました。

自身の眼で選んだタネに、熟練の江戸前仕事を施すと、鮨はここまで美味しく、ここまで個性的になるんだと、

江戸前鮨の本質的な魅力を再認識しました。

 

また、粋な雰囲気と接客の中で頂く事で、「鮨店の魅力」も再認識しました。

2017年1月に再訪した時も同じような感想を抱きましたが、2年強を経て更に強く感じさせる職人と言うのは凄いです。

 

伝説の職人であり、「鮨の神様」とまで呼ばれた加藤博章氏の薫陶を受けた職人でありながら、ビギナーから通まで楽しませてくれる、名店だと感じました。

 

銀座わたなべさんの酒肴と握り

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鯨ベーコン

これは旨い!芥子と酢で和えており、食欲をダイレクトに刺激。

脂は全くクドくない。

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刺身

真羽太の昆布〆、鰹タタキ、伊佐木。

僕は鮨店では魚は握りで頂きたいと考えているが、全て仕事を施しており、刺身で頂く必然性がある。

真羽太は長崎産で、〆の仕事が心底圧巻!

バッチリ〆て、脱水に加えて昆布の旨味を乗せているが、食感はしっとりほどけて、ぶっちり切れる。

昆布の香りも抑制されており上品で、素晴らしい昆布〆。

鰹は銚子産で、大変力強い旨味、酸味。

炙りや薬味の塩梅も絶妙。

伊佐木は高知産で、雄々しい香りがしっかり漂い、皮はプチプチと気持ち良く弾ける。

そして、皮下脂肪が滲み、軽い酸味が引き締める。

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青森産紫海胆、湯葉、イクラ醤油漬け

超濃密な味わいの湯葉に各々の素材が絡んで美味。

イクラは季節外れとなるが、漬け込みが強くねっちりしているので、ペースト的に合う。

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槍烏賊と蛸

蛸は旬モノの佐島で、槍烏賊は何と子持ち!

通常はとっくに終わっているので、意外性のある出会いに喜ぶ。

甘く炊いた槍烏賊に柚子胡椒を少々使用しており、もっちりした子に頬がほころぶ。

蛸は大変良い香り!

そして、特筆すべきが食感(=下処理と火入れ)。

しっとりした食感で柔らかいのだが、蛸らしい弾力もあり、絶妙な食感。

柔らかすぎず、硬すぎず、蛸の持ち味を生以上に引き出されている。

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太刀魚の幽庵焼き

産地は小柴。

幽庵地の味わいは強いが、身への浸透は穏やかで、しっとりとほどける。

 

この後握りに移行します。

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ガリ

甘みを用いたクラシカルなガリ。

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鯵の棒寿司

産地は浜田(島根県)ではなく出水(鹿児島県)であったが、大変魅力的。

親方は皮付きの鯵を巧みに〆る。

皮スダチ始め薬味を多用しているが、鯵の強さでバランスが取れている。

最初は爽やかな印象を与えて、途中から旨味が込み上げてくる!

最初と最後で味が段違いな鮨。

この後も痛感するが、噛みしめて味が高まる鮨である。

直ぐに飲み込むのは厳禁だ。

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ハタ

昆布〆。ぶりんぶりんとうねる、タフな身を噛みしめると、旨味と脂がグイグイと高まる。

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アオリイカ

大間の海胆を用いたソースを添えて。

ひとえに、甘みの奔流。

アオリイカの甘みに海胆の甘みが加わり、香りと旨味が広がる。

アオリイカの粘度もあるので、濃厚な印象が強まる。

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小鰭

富津産…つまり江戸前。

余韻としての香りが面白い小鰭。

バシッと〆て、噛みしめるほどに味が深まる夏の小鰭。

最後に産地違いを頂き、全く異なる魅力に感嘆。

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定番の口直し

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蒸し鮑

これまた味わいの変化が素晴らしい。

身と肝を用いた軍艦で、旨味に磯の香りが加わり心地良い。

蒸し鮑と言う王道の仕事なのに個性と意外性を表現している。

キャヴィアやトリュフなどの西洋食材を加える安易な足し算とは次元が異なる鮨。

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ボタンエビ

甘みが強いボタンエビ。

活きではなく、朝に〆たものを寝かせて使用されているそう。

食感はトロッと感にボタンらしいぶりっと感もある。

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トリ貝

ブランド、舞鶴産。甘みがしっかりしており、磯の香りは上品。

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鮪スナズリ

鮪のレア部位に当たり、大トロの先の腹の一番下の部分。

脂が非常に強く乗っており、魚よりも肉っぽい印象を与える。

ちなみに、鶏のスナズリ(砂肝=砂嚢)とは全く関係ありません(笑)

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穴子

野趣を感じさせる風味があるが、産地は対馬。

小さなサイズ故に香りが良い。

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キリリと端正な吸い地に鰯のつみれ。

美味しい。

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玉子

甘みが強めの玉子だが、口に残らないのでスッキリ。

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小鰭 追加

佐賀産で、産卵後の成魚。

新子を生んだ後なので味は如何か!?と思ったが、仕事で魅力を引き出している。

風味、旨味としては大変穏やか。

しかし、噛みしめると爽やかな味わいが込み上げてくる。

伺ったところ、子持ち昆布の浸かっている塩水を割って、立て塩で〆ているそう。

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穏やかな旨味が加わり、大変面白い〆。

 

本当の意味で「腑に落ちる」秀逸な鮨だと感じました。

文化、伝統の力強さを実感します。

 

店名: 銀座 鮨 わたなべ

シャリの特徴:塩と赤酢のみを用いつつ、バランス良好。温度も最適。

予算の目安:15,000円~20,000円

最寄駅:銀座駅から100m

TEL:03-3572-3330

住所:東京都中央区銀座5-6-14 銀座ビルディング3F

営業時間:17:00~23:00

定休日:日曜、祝日

 

ご参考になりましたら幸いです!

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