すしログ 〜The Encyclopedia of Sushi〜

全力で鮨の魅力を伝えるブログ!日本料理、郷土料理、和菓子の名店も紹介します。Since 2015

すしログ日本料理編 No. 164 由庵 矢もり@月島

由庵 矢もり

こちらは2014年にオープンされた月島の蕎麦専門店です。

「蕎麦懐石」のスタイルを取っておられ、大変マニアックと言う噂を聞いており、2年くらい前から訪問したかったお店となります。

f:id:edomae-sushi:20190326225520j:plain

お店は月島の「もんじゃストリート」から脇道にそれた路地にあり、知らなければ素通りしてしまうような外観です。

素っ気ないサッシュの扉の奥に看板が控えめに掲げられております。

ただ、店内に入ると端正な空間が広がっており、意外性抜群。

すぐに靴を脱いで上がるのですが、下足の所作にご主人のもてなしの心を感じます。

職人気質…いや、どちらかと言うと研究職気質なご主人なので、人によっては話しづらいと感じるかもしれませんが、

蕎麦はじめ料理のお話をすると、大変真摯で面白い方だとお見受け致しました。

 

なお、「蕎麦懐石」と言うスタイルのお店には全国で何軒かお伺いした事がありますが、定義付けは少々難しいように感じます。

個人的には、懐石料理の流れと調理法の中に蕎麦を組み込んだものであり、蕎麦は必ずしも麺の形式を取らないコースだと解釈しております。

単に蕎麦+料理では「蕎麦懐石」とならず、蕎麦をコースに有機的に組み込む必要があると思います。

蕎麦の前に単に料理が提供されるのでは「蕎麦懐石」とは言えず、料理の中に蕎麦の存在感を表現してこそ「蕎麦懐石」ではないでしょうか。

また、懐石料理店で蕎麦を最後に出すお店もありますが、そちらはあくまでも懐石料理でしょう。

そして、こちらのコースは紛れもなく「蕎麦懐石」だと感じました。

矢もりさんの蕎麦懐石の概観

冒頭で出てくる【蕎麦味噌】と【蕎麦掻き】が〆の蕎麦への期待を十分に高めてくれる上に、各料理は蕎麦を邪魔しない、それでいて個性を持った上質な料理として仕上げられております。

ここで、蕎麦を邪魔する料理が出てしまうと、無粋であり「蕎麦懐石」と言う事は出来ないと(個人的に)思います。

ご主人は、今や失われつつある江戸料理のレシピを再現、アレンジしておられ、それが大変蕎麦に合う。

蕎麦が江戸で進化したものである事を考慮すると、相性の良さは必然と言えるでしょう。

温故知新の妙味がある上に、今後の「蕎麦懐石」の可能性も示していると感じました。

 

そして、最後に肝心の蕎麦。

これが大変滋味深く、旨い。

在来種を中心とした最高品質の蕎麦の実を調達され、全て臼で手挽きされると言う徹底っぷり。

香り高く、甘みが十分で、印象深い蕎麦でした。

今回は初訪問だった事と、海外の旧友との久々の食事であった為、産地を細かく聞く事は致しませんでしたが、

次回訪問した折には産地とそれに対するご主人のご意見を聞いてみたいと感じました。

 

こちらのコースは3つあり、6,800円、8,000円、10,000円。

今回は8,000円のコースを選択し、内容は下記の通りです。
・蕎麦味噌
・先付3種類
・蕎麦掻き
・お造り
・炊き合わせ
・蕎麦サラダ
・温かい蕎麦
・ざる蕎麦
・水菓子

 

なお、写真は撮影させて頂きましたが、ご主人のご意向を汲んで、文章のみで表現させて頂きます。

 

矢もりさんのお料理の詳細

蕎麦味噌

煎り加減、味噌の塩梅などが素晴らしい。

口当たりはしっとりしており、ベッタリしたところが無く、味わいにはコクがあり、香ばしい。

軽い酸味もあり、冒頭でスッキリと頂ける。

 

先付3種類:

桜海老のおから、ホタルイカと子持ち槍烏賊の饅膾(ぬた)、ほうれん草とシラス

全て穏やか季節を感じさせてくれる秀逸な品。

こう言った料理で季節を感じさせてくれるのが、嬉しい。

桜海老のおからは香ばしい桜海老を、おからの風味が受け止める。

ぬたはホタルイカと子持ち槍烏賊に庄内浅葱、ミョウガ、オクラを合わせる。

徳島産のシラスには、シラスの香りを引き立てるまろやかな出汁が引かれている。

 

蕎麦掻き

これが抜群に印象深かった。

臼で挽きたての粉を用い、香りが素晴らしく、甘みを楽しませ、歯切れが気持ち良い。

 

お造り:鮃の昆布〆と煎り酒、初鰹の焼霜造り

共に江戸料理の仕事を施した魚が2種。

鮃は昆布〆の塩梅ならびに煎り酒の味わいが秀逸。

みっちり〆つつ下品でなっておらず、上品な印象を与える。

そして、煎り酒の味わいは大変スッキリしており、完成度が高い。

さりげなく提供されるが、使用している調味料に手が込んでいる。

そして、初鰹は勝浦産。

ぷちっと切れる食感が独特で、これは漬けによるものか?

気持ち良く切れた後に、血の野趣ある香りを楽しませる。

付け合わせは江戸時代と同じく、芥子。

 

 

炊き合わせ

菜の花の昆布〆、煮玉子、煮豆腐、鴨のロース。

 

蕎麦サラダ

意外性があるが嫌味ではない一品。

サッパリとした口直しになり、この後の蕎麦への期待を高めてくれる。

 

温かいお蕎麦

ウド、菊菜、白菜の薄葛仕立て。

3月下旬とは言え残寒を感じさせる夜だけに、温かく、葛打ちされたツユが嬉しい。

出汁はキリッとしつつ柔らかい。

ウドが甘く感じる。

 

ざる蕎麦

甘みが特徴的な蕎麦で、歯ごたえも申し分ない。

産地を聞かなかったのが甚だ残念である。

ツユはかえしにおける醤油の使用量が抑えめで、まろやか。

本枯節以外に幾つかの節をブレンドしている模様。

更に、昆布も使用か。

 

水菓子

蕎麦蒸し羊羹。その名の通り蕎麦粉を用いた和菓子。

 

かなり硬派な通好みのお店だと感じました。

異なる季節、時期でどのように表現されるのか、大変興味深いです。

 

店名:由庵 矢もり(ゆうあん やもり)

食べるべき逸品:在来種を中心とした蕎麦とさり気なく供される江戸料理。

予算の目安:蕎麦懐石コース6,800円、8,000円、10,000円

最寄駅:月島駅から350m

TEL:03-6225-0633

住所:東京都中央区月島3-9-7

営業時間:18:00~22:00

定休日:日曜、祝日

※完全予約制となります