すしログ 〜The Encyclopedia of Sushi〜

全力で鮨の魅力を伝えるブログ!日本料理、郷土料理、和菓子の名店も紹介します。Since 2015

すしログ日本料理編 No. 160 心根@高槻市(大阪府)

心根

初めてお伺いした時から心をグッと鷲づかみされた日本料理店、心根さん。

その後も、足を運んで季節季節の御料理を楽しませて頂いています。

ご主人・片山さんの料理は郷土色が強く、それでいてモダン。

豪奢ではなくどちらかと言うと質素。

質素でありながら 、煌びやに輝き、力強い料理。

「質素」と表現するとネガティヴな印象を持たれる方もいらっしゃるかと思いますが、個人的に日本料理の本質は質素の中に複雑さを表現する事にあるように感じます。

質素=単純ではなく、シンプルでありながら玄妙な味わいの料理、それこそが優れた日本料理だと言えるのではないでしょうか?

昨今、何かと高級食材の足し算、掛け算が主流となっており、甚だ残念な局面を迎えておりますが、心に響き、いつまでも残る日本料理とは、虚飾性の無い質素で玄妙な料理だと思います。

これこそが日本料理の根幹にある妙味必淡の極意でしょう。

移転後の外観と内観

心根さんは2018年12月に移転され、現在の住所は高槻市。

しかし、住所こそ「高槻市」ですが、高槻市駅(高槻駅)から車で40分かかる場所にあります(笑)

ほとんど京都の亀岡に近い山間に移転されたので、何てチャレンジングな場所に!と思いましたが、訪問してみて理由に納得。

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築100年超の古民家にリフォームを施されており、あたかも昔話の世界の日本古来の邸宅に紛れ込んだような気持になります。

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「夢を売るのが商売ですから…頑張りました」と仰る片山さん。

相当奮発され、英断が必要な移転だったかと思いますが、間違い無く日本を代表するお店になると確信しております。

まだミシュラン調査員の方は訪問されていないようですが、近い将来、星を取られるのではないかと思います。

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入ってすぐの場所に鎮座する朱の「へっついさん」。

京都では「おくどさん」とも呼ばれる、要はカマド。

小壁には「火廼要慎」の阿多古祀符。

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お料理のコースは、お昼は8,000円と15,000円、夜は15,000円のみと言う構成です。

伺ってみて一斉スタートでない点に驚きました!

バラバラの来店であってももてなされる姿勢に、これまた昨今の一斉スタートや回転制とは逆の心意気を感じた次第です。

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移転後の心根さんの料理

15,000円のコース
・あつもの:百合根のすり流し
・八寸
・スマガツオの塩タタキ
・蟹と蟹味噌の千枚漬け巻き
・琵琶湖産モロコの焼きもの
・鰤の餅米揚げ、蕪餡、あられ柚子
・平井牛カイノミの焼きもの
・お食事:炊き立ての土鍋ご飯、粕汁、卵、本枯れ節、香の物
・椿餅
・お薄

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まずは、濃いめの煎茶で温まります。

寒い時期の訪問なので嬉しい。

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百合根のすり流し

鱈の白子の天麩羅、地元の椎茸焼きを添えて。

頂くと出汁の旨味が広がり、百合根の甘みが奥深く満ちてくる。

決してやかましく主張せず。

そして、しゃくりとした食感を少し残している。

この百合根の甘みと食感の活かし方に、センスを感じさせる。

(百合根は非常に甘く、柔らかく供される事が常なので)

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八寸

二十四節気の立春から大寒の時期を表現した八寸。

「立春大吉」の札はご主人自らの筆。

持ち帰らせて頂き、玄関先に貼りました(笑)

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まず、お多福の器には、豆乳を葛で練った豆腐。

三ツ葉が結んである所以は、「結び目に神が宿る」とされているからとの事。

勉強になる。

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大豆を大王松(ダイオウショウ)に刺して、豆を投げた時の放物線を表現されている点には昨年同様に嬉しくなる。

他のお料理にも意味が込められているが、訪問された際のサプライズが無くなるため、今回は割愛。

全体的にお手製の発酵食品が奏功しており、印象深かった。

出汁を含ませた菜の花は、香りと苦みが爽やかで、唐墨を上品にアクセントとして使用。

赤蕪で挟んだへしこは旨味の強さより発酵期間の長さが窺い知れる。

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つぼつぼに入ったキクイモサラダにも唐墨が使用されているが、ついついお酒を飲みたくなる佳き味。

山椒を少し用いてピリリとさせている点もニクい。

味わいのみならず、金柑をタンポポに見立てて飾り包丁を入れ、来る春に憧憬を抱かせる。

八寸は作り手と受け手、共に感受性が必要な料理形式である。

食べ手の感受性をくすぐる八寸は、誠に嬉しい。

ちなみに、片山さんはしっかり説明してくれるので、安心だ(笑)

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スマガツオの塩タタキ

標準和名はスマで、ほぼ関西、四国、九州あたりで消費される魚。

スマは藁火で炙っているので、香ばしく旨いのは言わずもがな。

個人的に野菜の使い方と、イクラの漬け地にほのかな甘みを付けている点が印象深かった。

紫大根の甘み、紫水菜のかすかな苦味など、味覚を巧くバランシングされている。

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蟹と蟹味噌の千枚漬け巻き

実に西の冬らしい小品。

蟹の風味と甘みが広がり、最後に新生姜の香りと辛味がふうわりと纏める。

蕪が味覚的にも食感的にもしっかりと受け止める。

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琵琶湖産モロコの焼きもの

付け合せの調味料が面白く、クレソン酢!

野菜は手摘みのハコベ(ご存知、春の七草のひとつ)の白和え。

甘みのある白和えが、モロコの苦味に寄り添う。

モロコは勿論「へっついさん」による炭火焼きで、カリッと感としっとり感が共存している。

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鰤の餅米揚げ、蕪餡、あられ柚子

餡は蕪の甘みが活きており、旬の鰤の酸味と旨味を強調する。

ゆっくりと炭火で焼き上げた、パリパリの蕪の菜っ葉も魅力的。

実に滋味深く、冬を楽しませてくれる。

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平井牛カイノミの焼きもの

平井牛は亀岡で1912年に創業された京都丹波牧場の牛。

ストレスフリーで育てられた牛は文句無しの味わい。

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非常に柔らかく、酸味に加えてたっぷりの旨味が満ちている。

脂は全くクドくない。

焼き加減も抜群だ。

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凄いぜ、へっついさん!
…否、凄いぜ、片山さん(笑)

付け合せはクレソン、キャベツ、むかごのおこわ。

黒大根の鬼おろしの餡にフリーズドライ醤油をまぶしている。

付け合せは楽しませてくれる組み合わせで、最後にキャベツで餡をくるんで頂いた。

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お食事:炊き立ての土鍋ご飯、粕汁、卵、本枯れ節、香の物

まず言いたいのは、ご飯が美味しいこと美味しいこと(笑)

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本当に美味しい。

滋賀・安土の魚石・瀬海さんの白ご飯も美味しいけれど、片山さんの白ご飯も格別。

これだけで箸が止まらなくなりそうだ。

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理性を総動員して、削りたての本枯れ節を掛けて頂く…

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しゅわっと溶けるような削り具合で、旨味が舌に広がる。

そして、粕汁も絶品。

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京人参、三重の猪の時雨煮、揚げた里芋、笹掻き牛蒡、大根など、魅力的な冬の具材がたんまり入っている。

「粕汁ってこんなに美味しかったっけ?」と思う事は必至。

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そして、ご飯をお代わりして、亀岡産・平飼い卵でTKG。

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全て頂き、日本人である喜びを実感。

外国人の方も、「今度生まれ変わったら日本人になりたい」と思うことだろう。

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水菓子

椿餅。片山さんの和菓子は下手な和菓子店をゆうに超えはります(笑)

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お薄

 

またお伺いする日を楽しみにしております。

 

店名:心根(こころね)

食べるべき逸品:独自の感性で季節を表現し、自然の恩恵を感じさせてくれる片山料理。

予算の目安:お昼8,000円もしくは15,000円のコース、夜15,000円〜

最寄駅:なし

TEL:072-691-6500

住所:大阪府高槻市中畑久保条15-1

営業時間:【お昼】12:00〜15:00、【夜】18:00〜21:00

定休日:火曜