すしログ 〜The Encyclopedia of Sushi〜

全力で鮨の魅力を伝えるブログ!日本料理、郷土料理、和菓子の名店も紹介します。Since 2015

すしログ No. 259 鮨おばな@館林(群馬県)

鮨おばな

海なし県、群馬において県外から食通を惹きつける鮨店です。

当地(館林)で10年以上営んでおられるそうですが、ここにきて急速に注目を集めておられます。

この度、東京から2時間以上かけて、胸を躍らせながら訪問しました。

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お店は館林駅から1kmほど離れた場所にあり、駐車スペースが広い点は地方の鮨みせならでは。

店内のレイアウトも余裕があり、寛ぎの時間を過ごすことが出来ます。

 

鮨おばなさん概観

そして、肝心の味については、期待以上の完成度と個性を誇っておられ、率直に「アメージング!」と感じました。

親方は快活で、実直な接客とはにかんだ笑顔が印象的な方でした。

 

赤酢主体のシャリは結構特徴があり、調味よりも硬さに妙があります。

時折アルデンテの粒があるものの、同時に柔らかさも感じさせる炊き加減。

舌に触れる米粒のサイズ感より、ブレンドされているのですか?と聞いたところ、佐渡と栃木のコシヒカリをブレンドされておりました。

これが独特の食感とほどけ加減を生み出しており、たくさん頂いても飽きが来ないシャリに仕上げておられます。

親方は正確な手返しで素早く握られ、8人×21貫=168貫ぶっ通しでしたが、ブレは微塵もありませんでした。

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今回はフルスロットルのおまかせで頂き、酒肴多めで、握りも多めの内容。

お酒は無しで臨みました!

 

頂いた酒肴と握り

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鱈の白子

「普通の白子ですが、良いモノがあったので」との事。

果たしてどのような意味かと思ったが、以降の食材・酒肴を頂き、その意が解る。

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黒鯛

鳴門の名漁師・村公一さんの黒鯛。

エサが生の青海苔故に黒鯛特有の磯っぽい香りが無い。

3日寝かせた状態で、強い甘みに軽い酸味が滲む。

みっちりした身は、しっとりとほどける。

香りはスッキリで、ある種の柑橘を思わせる爽快感すら感じた。

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岩手産。身(火入れ)は柔らか過ぎず、噛み締める喜びがある。

個人的に好きな食感。

調味料を用いておらず、濃密な旨味がある。

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鰆のタタキ

きっちり藁で燻したと思われる香り。

強い旨味があるので、燻蒸香が良いアクセント。

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アスパラ菜の漬け物

館林産。海なし県なので野菜は地物を採り入れておられる。

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海胆パフェ

シャリに海胆を混ぜているので、ひたすら濃密。

シャリの酸味が活きている。

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鴨居(三浦半島)の3.5キロの蛸!

力強い食感に仕上げている点が個人的に好み。

噛みしめると旨味に加えて、濃厚な香りが立ち上がる。

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牡蠣

産地は定評ある仙鳳趾。

100℃でしっかりと火入れされているため、みっちりとした身質に仕上がっているが、決して硬くはなく、むしろ凝縮されたペーストのような食感。

意外性のある美味しさで、仙鳳趾牡蠣の魅力を引き出す仕事。

柚子胡椒を混ぜた生海苔も小粋な付け合せ。

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蝦蛄

八幡浜。当地の蝦蛄を扱う仲卸は、豊洲で1軒のみとの事。

甲殻類の香りが強く、爪はやっぱり甘みに満ちている。

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爪で舌鼓を打っていたところ、登場したのが脚肉!

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蝦蛄をさばいた事がある人ならば分かると思うが、大変手間が掛かる部位。

女将さんがさばかれたとの事で、甘みがひとしおであった。

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鮑肝

これも火入れはしっかりで、香りが強い。

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茶碗蒸し

このわたがたっぷり入った茶碗蒸し。

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巨大でビックリ(笑)

鮪の大トロに当たるとの事で、バッチリ脂が乗っている。

しかし、ブヨブヨしておらず、後味が良い。

塩は当てておらず、皮のパリパリ感も魅力。

付け合わせの野菜は、板倉町のアイスプラント。

 

この後、握りに移行します。

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ガリ

酸味が強めで、ストレートに酸っぱい。

辛味もあり、甘みは極めて低い。

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淡路、800グラム。

香りの強さに加えて、余韻の強さが圧巻であった。

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シラカワ

標準和名・白甘鯛。八幡浜産、昆布〆。

初手は昆布が強めかと思いきや、シラカワの甘みが高まり、

良き味覚的着地を見せる。

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佐渡。生姜を少量噛ませている。

脂が乗っているので薬味と調和する。

6日熟成。

 

次が鮨好きとしては最高に面白かった、小鰭の3貫連続食べ比べ。

全て同じ〆方で、寝かせる時間が異なっている。

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小鰭

当日の朝9時半〆(約11時間)。

身はしっとりしており、旨味ならびに香りも上品。

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小鰭

前日の朝9時半〆(約35時間)。

当日のものよりも身が締まり、香りが少し高まっている。

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小鰭

5日前の〆(約107時間)。

やはり最も美味しいのは寝かせたもの。

香りが深まっており、実に良い。

そして、何よりも余韻が高まっている点、シャリとの相性が向上している点が寝かせの効力。

寝かせて脂がこなれる事で、シャリの酸と乳化し易い。

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更に、畳み掛けるかのような鮪4連発が炸裂!

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鮪赤身

旨味がしっかりしており、酸味が脇を固める。

身質はしっとり。

旨味が強いので寝かせているのかと思いきや、競りは前日の朝との事。

これは意外にも旨く、勉強になった。

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鮪、血合いギシ

これも旨味が強く、鉄の香りが上品に漂う。

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鮪、分かれ身

脂が非常に強く、握りを掴む際、危うくスリップしそうになる(笑)

旨味は濃厚ながら、香りは上品。

実に印象深い。

以上の鮪の産地は竜飛で、漁法は延縄。

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大トロ

大間一本釣りの腹カミ一番。

これは11日熟成。

魚体はそこまで大きくなかったが、脂の乗りは十分。

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墨烏賊

肉厚で隠し包丁も幅が広めなので、非常にバツバツ。

しかし、最後にとろり。

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針魚

プルプルな食感に脱水。

塩気は割と浸透していたが、〆時間は3~4分との事。

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漬け。これは素晴らしい仕事。

ねっちりとした身は舌に旨味を滲ませた後、瞬時に乳化する。

ひたすら強い旨味。

しかし、香ばしさが印象を引き締め、実に魅力的。

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小柱軍艦

大星(大きな小柱)。

甘みだけでなくジャクジャクした強い食感も楽しめる。

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鴨川産。火入れはしっとりで、調味は軽い甘みを付けている。

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肉厚でとろろん!

産地は青森との事であったが、八戸(八戸前沖さば)ではなかった。

脂はまろやか。

生姜を噛ませている点が個性的。

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カイワレ

昆布〆なので旨味に加えてトロミが付いている。

カイワレの香りが強く、昆布〆が巧みなので、野菜鮨でも嫌味無し。

ご当地のカイワレで、生だと辛いそう。

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いくら軍艦

秋のスペシャリテで、料理人も唸るとの事。

頂いてみて納得。

超濃密にねっとりと舌に絡み、皮は今時期でも柔らかい。

醤油漬けだが味噌漬けのように濃密、濃厚。

シャリに良い意味で勝つくらいの存在感!

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海松貝

肉厚でジャグジャグした食感がワイルドで、甘みが強い。

噛みしめる程に香りが高まる。

そして、軽い苦味が引き締める。

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海老丼

肉厚な天然車海老に10年継ぎ足しの海老出汁を用いたタレを使用。

丼形式はこれだけ見ると首を傾げる人がいるかもしれないし、8~10貫の構成の中であれば確かに不自然に映るだろうが、今回の構成の中だと精彩を帯びていた。

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海胆

口溶けの良い海胆で、甘く、明礬の収斂味は非常に弱い。

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北海道吉岡産、東沢の海胆で、2017年に1箱10万円を超えた超高級品。

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穴子

こんがり仕上げているが、食感は柔らか。

煮ツメは濃厚。

穴子にも味が染みており、香ばしい。

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玉子

海老はそこまで香らず、甘みも弱めで、粘度は低い。

あまりかき混ぜず、意図的に「スフレ状の玉子」とは異なるものに仕上げている。

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水菓子

女将さん謹製のアイスクリーム!

砂糖を使用していないそうだが、大変美味しい!

 

以上、トータルで29,000円(お酒無し)とお会計は額だけ見ると高額。

しかし、内容を考慮すると心からの満足に値する額でした。

「真面目に働いてきて良かったな~」と思う内容(笑)

こちらは12,000円のコースもあるお店なので、親方としても最高のプレーヤーを揃えて臨まれた事は明白です。

再訪するとしても覚悟の要る立地ですが、それでも再訪したいと思わされる力強いお店でした。

幹事の友人に感謝致します!

 

店名:鮨おばな

シャリの特徴:お米2種をブレンドし、赤酢主体で、硬めに炊きつつ弾力感のあるシャリ。

予算の目安:おまかせ13,000円~

最寄駅:館林駅から1,000m

TEL:0276-72-1604

住所:群馬県館林市大手町5-1

営業時間:火〜土17:30~21:30(最終入店20:00)、日・祝12:30〜17:00(最終入店15:00)

定休日:月曜、第2・4日曜