すしコラム No. 3 マグロが危ない!漁獲量激減の真の理由とは何か?

コラムはブログ初期に書いて以来となりますが、久々に筆を執りたいと思います(笑)

読者の皆さまは、マグロの漁獲量が減少している事をご存じでしょうか?

また、その理由をご存知でしょうか?

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マグロを取り巻く問題

日本人ならば多くの人が好きなマグロ。最高に酢飯に合う鮨種の一つ。漬けにして、丼で食べても最高。しかし、昨今、漁獲量が激減しており、サンマやイワシとは違って減少理由がハッキリしているのに、減り続けている状況です。

 自身の問題意識が強くなったのは1年以上前。意外にも、食べる事が好きな人でも絶滅危惧種に登録された事は知っていても、減少の「理由」までは知らない人が多いことに気づきました。そして、いち鮨好きとして「実態」について書かなければ、と思った次第です。また、料理人の方でも、減少の元凶たる巻き網マグロ」に無頓着な方がおり、ショックを覚えました。なので、極めて微力ながら一石を投じる事が出来れば…と今回の記事を書かせて頂きます。

 鮨や日本料理が好きな人であれば、昨今魚の不漁に伴い、価格が全般的に高騰を続けている事はご存知かと思います。中でも減少の理由がハッキリしていながら、悲惨な状況に追い込まれているのが太平洋クロマグロ(日本で獲れるマグロ)です。実は、太平洋クロマグロだけでなく、大西洋クロマグロもかつては資源量が大きく下がりました(※大西洋クロマグロはその名の通り大西洋…地中海、メキシコ湾、カリブ海などに生息)。そこで、2000年代に2010年まで漁獲規制を行ったところ、V字回復となり、なんと5年ほどで元の資源量に戻りました。しかし、我らが太平洋クロマグロは初期資源量の2.6%にまで落ち込んでいる「惨状」です。

何故ここまで!?と驚く方の方が多いでしょう。理由はグルメブームでマグロが乱獲されたせい??いやいや、決してそんな事は無く、原因は明白であり、鳥取県境港沖のまき網漁となります。

マグロ問題の現況である境港のまき網漁とは?

マグロは回遊魚となり、日本では夏に日本海を遡上して、初冬に青森から北海道で獲れるマグロが最も脂が乗っております。「大間のマグロ」と言えば、高値が付く事は日本人全員が知っているところですね。なぜ美味しいか?の理由は、ひとえにエサ。津軽海峡のスルメイカは脂が乗っており人間が食べても美味しいのですが、マグロもまた冬を前に大量に食べて身を太らせます。魚も動物も、美味しい食事をした方が美味しくなるのが当たり前です。

マグロは6月~8月に日本海で産卵を終え、各海域でエネルギーを蓄えながら、7月頃から冬に向けて北へ遡上します。しかし、巻き網漁は正に産卵期の6月~8月に、産卵場である鳥取県海域で行われます。産卵のために特定の海域に集まってくるマグロ。そこで、巻き網漁はソナーで魚群を特定し、直径1キロほどの網で約100トンの魚を捕縛します。わずか1日で、大間で獲れるマグロの1年分を大量捕獲。正に一網打尽。最も美味しくなる前に、マグロが虐殺されている状況です。言うまでもなく資源管理の観点としてムチャクチャな状況。

境港では、巻き網を行う3社だけで1日300トン以上獲られる日もあるそうです。しかし、メディアでは「マグロ大漁!」と報道します。記者の見識の低さもさる事ながら、読者のメディアリテラシーが試される報道だと思います。

ちなみに、前述の大西洋クロマグロについては、産卵場が地中海とメキシコ湾となります。しかし、メキシコ湾では通年禁漁となっており、地中海では産卵がほぼ終わったタイミングで漁が解禁されます(5月下旬)。この姿勢を何故日本は見習えないのでしょうか?

そして、巻き網漁でもう一つ問題なのが「身焼け」。上記の通り巨大な網で一網打尽にするため、マグロが暴れて身がズタズタになってしまいます。マグロは体温が高い魚ですが、暴れると40℃を超え、身が焼けてしまうのです。結果として、通常ならキロ1.5万円〜3万円、高い時で5万円以上付くはずのマグロが、キロ500円以下(最安値は200円、100グラム換算で20円!)で叩き売りされております。

参考情報:有名なマグロ仲卸である藤田水産社長のブログ

サステイナビリティ(持続可能性性)の高いマグロ漁とは

反対に、鮪漁における良い例を挙げてみましょう。マグロの「手当て(漁獲後の処置)」の丁寧さで名を馳せるのが、大間の向かい側の北海道・戸井。戸井ではマグロは全て延縄漁(詳細は後述)で獲られ、釣り上げたマグロは瞬時に締められ、放血(血抜き)と神経〆を施し、内臓も処理した上で、氷もしくは氷水での冷やし込みまで行われます。その間、わずかに10分から15分!マグロ1本に対して、この手間。マグロ100トンを同時に獲る巻き網と味に差が出るのは、子どもでも容易に分かる話です。

それでも、海を管理する水産庁は「親を獲っても子は減らない」、「産卵期のまき網は資源に影響ない」との一点張りで、巻き網漁に規制を掛けておりません。しかし、境港の巻き網漁を行った後は、わずか5%程度のマグロが北上するのみだと言われております。尚、境港の巻き網漁は13の船団が行っておりますが、必ずしも鳥取県が悪いわけではありません。巻き網船団は大手水産会社の子会社であり、巻き網会社で構成される「まき網協会」は水産庁役人の天下り先となっている状況なので…
壱岐や対馬の漁師は、漁獲量の回復を優先すべく、産卵期の漁を自粛しました。また、定置網漁や一本釣りには水産庁の制限が設けられております。しかし、最も負の影響力が大きい巻き網漁は続行されている状況です。

長崎県壱岐市勝本町の漁師は海へのダメージを鑑みて、網を使わず一本釣りのみでマグロを獲ります。しかし、資源量減少の影響を被っており、2005年に358トンあった漁獲量は、2014年には23トンにまで減少しております。2005年まで遡らず、2012年と比較しても僅か2年間で145トンから23トン(6分の1強)まで減っている異常事態です。

マグロへのダメージが少ないとされる漁としては、他に延縄漁があります。江戸期の延享年間(1744~48)に房総半島で生み出された伝統漁法で、前述の戸井で行われている漁となります。これは、最大で150kmの縄に2,000本以上の仕掛け針と餌を付けて釣ると言う、壮大な漁法です。そして、所要時間は縄を投げるのに4時間、魚が掛かるのを待つのに5時間、引き上げるのに12時間。針が2,000本と聞くと、漁獲量に影響があるのではないかと思われるでしょうが、それでも釣れるクロマグロは5~10尾程度。延縄漁は狙った魚をピンポイントで釣れるため、獲る魚の漁をコントロールしやすいと言われております。他のマグロを含んだ総量でも1回の漁で1~1.3トンと言われるので、ターゲットのマグロを100トン獲りつつ、ターゲット以外の魚も釣る巻き網漁とは雲泥の差です。

まとめ

以上、今までに収集した情報をもとに(比較を経て)記事をまとめました。そこで、僕が一つだけ言いたい事は、マグロを口にするならば事実を知るべきだ、と言う事。資源管理は国にしか出来ません。しかし、原初の主要因が巻き網漁であり、水産庁の施策であると特定されているならば、個々人がその事実を知って食と向き合うべきでしょう。

太平洋クロマグロの産卵場の大半は日本のEEZ(排他的経済水域)内にあるとされています。他の魚の漁獲量減少に際しては、他国のせいにする報道が散見されますが、マグロについては日本の経済政策によって日本が主犯となっている状況です。日本が大好きであればこそ、これは悲しい事実ではないでしょうか?

少し硬い内容となってしまいましたが、当ブログを読んで頂いている方は、間違いなく全員が魚好きな人でしょう!一番良い時期に美味しい旬魚を食べるため、食の持続可能性=サステイナビリティを意識する事は今後一層重要になってゆきます。このような記事を書き、何がどうなるかと言ったら、何も変わらない可能性の方が高いでしょう。しかし、一人でも多くの読者の方に響いたならば、書いた甲斐があります。時代は個々人の意識が変わる事で動いていくものなので…

共感を抱いて頂いた方がおられましたら、ぜひとも友人・知人の食好きの方に、情報を共有頂ければ幸いです。美味しいマグロを守るために。

美味しいマグロのお話は、今度「旬魚」コラムでいたします!

鮨が10倍楽しくなる旬魚の世界 No. 16~秋・冬~マグロ(鮪)

※グルメブログの「コラム」なので、敢えて引用文献は明示いたしません。主観的記述となりますが、客観的事実に基づく点をご了解頂ければ幸いです。

【追記】

本記事を書いたのは2018年11月。約1年後の2019年12月にテレビ東京「ガイアの夜明け」にて、【“マグロ激減”の謎…追跡400日】という特集が放映されました。インパクトが大きく、世に広く知られるきっかけとなり、いち魚好きとして嬉しく感じました。

2019年12月3日放送 追跡!”マグロ激減”の謎|ガイアの夜明け : テレビ東京

今後、著名人や知識人、食関係のインフルエンサー諸氏も当問題に向き合って頂ければ幸いです。まだまだ問題意識が低い状況ですので…

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