すしログ日本料理編 No. 41 川原町泉屋@岐阜市(岐阜県)

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こちらは岐阜市内で独創的な鮎のコースを頂けるお店です。

冬であっても下手な旬の養殖物を凌ぐ鮎を頂けるお店、として知られております。

いわく、ハイテク冷凍庫があるそうで、瞬間冷凍した天然物は生の養殖物を凌ぎ得るそう。

それはそれで興味がありますが、僕は折角なので旬に機会を作って訪問しました。

川原町泉屋さんの立地

お店は岐阜の駅から離れており、長良川の鵜飼いの船着き場の近くにあります。

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この一角は趣のある建築が並ぶ旧市街となっており、街歩きが面白いです。

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そのようなエリアにあるので古いお店をイメージしたのですが、こちらは窓が大きく開放感があり、ログハウス的な雰囲気を持つモダンなお店でした。

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外から鮎の焼き場が見えるところが期待を高めてくれます。

 

川原町泉屋さんのコースの概要

コースは3,000円からあり、天然物のコースは6,000円から2,000円刻み。

僕は10,000円のコースを予約の上で訪問しました。

 

こちらの鮎のフルコースは、一言で言うと縦横無尽。

定番の鮎料理から、鮎のリエット、熟れ寿しの生ソーセージなど、鮎を用いた創作料理がコースのアクセントとなります。

結構個性的な内容なので好みは分かれるかと思いますが、個人的には大ヒット。

ご主人の創作性は嫌味になっておらず、確たる技術を感じさせます。

王道の塩焼きについても、都内の人気日本料理店を超える「焼き」の技。

しかも、面白い事に県内の川違いの鮎を食べ比べさせて頂ける。

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ご存知の通り天然物の鮎は稀少性が高まっており、川魚故に養殖物とは全く異なる食味を楽しませてくれる。

鮎に何処まで求めるか?

鮎の香りや旨味の違いを何処まで楽しむか?

と言った個々人の嗜好で評価が分かれるお店ですが、鮎に良い思い出が無い方こそ、訪問されると新たな発見があるのではないかと思います。

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ちなみに、天然鮎の【川違い・食べ比べ】は通常は12,000円のコースとなります。

僕が訪問した際は魚体が小さかったので、ラッキーにも食べ比べ出来た次第です。

10,000円のコースであっても、予約の際にご相談されるとよろしいかと思います。

【頂いたコース】
・鮎の白子のうるか、鮎のナレズシ
・焼鮎の笹巻き寿し、ウルリの甘露煮
・鮎のリエット、鮎の白熟クリーム
・熟れ寿しの生ソーセージと季節野菜のサラダ
・天然鮎の塩焼き
・天然鮎のうるか焼き
・味女(アジメ)ドジョウの唐揚げと季節野菜の天麩羅
・天然鮎らーめん
・天然鮎山椒煮と漬物
・自家製ジェラート

 

川原町泉屋さんの鮎のフルコースの内容

前菜:鮎の白子のうるか、鮎のナレズシ、焼鮎の笹巻き寿し、ウルリの甘露煮

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なんて稀少性の高いラインナップ!

前菜から飛ばしてきて嬉しくなりました(笑)

先ずは、鮎の白子のうるかに舌鼓。

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小さな白子だが、鮎の香りがしっかりあって面白い。

ナレズシは子持ちの雌と雄。

これもナレズシとしての完成度が非常に高い。

雄の方は酸味がキリリと鋭く走り、子持ちの雌は濃厚なコクで酸味が低い。

噛みしめた時に子がトロッととろけ、何処となく背徳的な旨味を感じさせる。

ウルリは標準和名カワヨシノボリ。

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日本の限られたエリアでしか頂けないレアな川魚。

山椒をしっかり利かせつつ、力のある風味があり、美味。

 

焼鮎の笹巻き寿し

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酢飯は甘めで、〆た鮎の酸味との相性が良い。

大葉と胡麻が食欲を刺激。

 

鮎のリエット、鮎の白熟クリーム

鮎を練り込んだグリッシーニと一緒に。

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リエットは鮎のほぐし身にうるかも使用しているようだが、苦味や癖が無く、香りを楽しませてくれる。

固定観念に囚われているシェフには作り出せない味わい。

鮎の白熟クリームはナレの酸味と塩気を利用し、クリームと合一。

ピッタリと合っており、これには嬉しくなった。

 

ナレズシの生ソーセージ

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ナレズシをソーセージに用いるとは、東南アジアのソーセージのよう。

料理名は奇抜だが、料理の国籍を超えたインスピレーションに基づいていると感じる。

ソーセージのそれとは異なる独特のコクが加わっているが、肉の旨味が強い。

個人的には、酸味や発酵によるクセをもっと利かせても面白いように感じた。

 

天然鮎の塩焼き、川違いの食べ比べ

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手前が長良川水系の郡上、奥が和良川。

どちらも備長炭を用い巧みに焼き上げている。

塩の振り加減もベスト。

郡上の鮎は力強い香りと肝の味わい。

しかし、肝の癖は低く、身の甘みと香りが印象的。

繊維質はふっくらしており、鮎らしい食感。

和良川の鮎はサラッと爽やかな印象を与えた後に、強い苦味のパンチと香りが到達する。

身は(鮎としては)引き締まっており、硬派で端正な味わい。

また、身の部分にも肝の香り(=苔の香り)が染み付いている点も印象深い。

ちなみに、様々な川の天然ものを頂くと、圧倒的に香りが異なる点を感じる。

更には、甘みも異なり、分かり辛いポイントとなるが繊維質も違いがある。

 

天然鮎のうるか焼き

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飛騨川系の白川のうるかと三年味醂を用いた焼きもの。

皮はパリパリと飴上に固まり、味醂の甘みが肝の苦味を抱擁する。

鮎の旨味、香りが壊れるのではと心配したが、さに非ず。

塩焼とは異なる楽しみを与えてくれる。

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付け合せの飛騨山椒は香りが良く、痺れは弱くじんわり。

香りの強さに仁淀川の山椒を思わされる。

 

味女(アジメ)ドジョウの唐揚げ

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アジメドジョウはドジョウ特有の泥っぽい癖が無く、非常に軽やかな風味。

その上、印象的な苦味が立ち、爽快感のある唐揚げに。

野菜は、玉ねぎ、パプリカ、カボチャ。

衣は薄く軽やかに揚げており、しっかりと美味い。

付け合せの調味料も鮎塩に飛騨山椒を混ぜたオリジナルで良し。

鮎塩はナレズシを作る際(塩漬けする際)に用いた塩を煮詰めて乾燥させたもので、鮎の旨味と風味が染みこんでおります。

 

天然鮎らーめん

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【天然鮎ぞうすい】と選べたが、ここは一つラーメンを。

〆までにご主人の創作性に信頼を抱いたので、より個性的な方を選んだ次第。

頂いたところ、これがまた絶品!

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スープは高級中華料理店の上湯を思わす程に旨味が強く、溶け込んだゼラチン質が舌を喜ばす。

鶏や中国ハムの圧倒的な旨味と、上品な香り。

そして、鮎と完全に一体化し、その相性たるや抜群。

鮎の魚醤を用いたり、鮎の骨を揚げたラードによる鮎脂を用いたりしている点が、トッピングの鮎の開きや鮎のほぐし身と旨く連結する事に成功している印象。

これは凄い。

中華料理店、ラーメン店を凌ぐ味わいに感銘を覚えた。

エッジが立った固茹での麺も極めてリズミカル。

尚、8,000円のコースは+1,000円との事なので、他の料理も考慮すると、10,000円以上のコースを選んだ方が満足度が高いと思います。

 

天然鮎山椒煮

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鮎に加えて、氷魚(鮎の稚魚)を用いた佃煮も付いているのが嬉しい。

鮎を駆使したコースの最後らしい佃煮。

 

自家製ジェラート

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ヨモギのジェラート。

ヨモギスイーツにありがちな強い香りではなく、上質な草餅のような香り。

胡椒も混ぜており、マニアック。

胡椒は爽やかに、じーんわり、ふわっっと伝わり嫌味が無い。

 

鮎料理を全般的に好きな方、

変わった料理が好きな方は訪問する価値が有るかと思います!

 

店名:川原町 泉屋(かわらまち いずみや)

食べるべき逸品:センスが光る創作鮎料理と、川違い天然鮎の食べ比べ。

予算の目安:6,000円〜 ※コースの詳細は本文通り

最寄駅:岐阜中心街から3,000m

TEL:058-263-6788

住所:岐阜県岐阜市元浜町20

営業時間:鵜飼開催期間中(5月11日~10月15日)11:30~14:30、17:00~20:30、

オフシーズンの夜は予約のみの営業

定休日:水曜(7、8月は無休、2月は完全休業)

 

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