すしログ日本料理編 No. 50 召膳 無苦庵@紀伊田辺(和歌山県)

今年の5月にお伺いした無苦庵さん。

この度、季節を変えて再訪しました。

食材に富む秋まっさかりの時期、そして、移転開店から約10か月経過したタイミングであるため、ご主人は紀伊田辺でどのような食材に巡り合えたか?

新たなる食材との出会いを非常に楽しみに訪問しました。

 

料理を頂いた印象としては、料理の前に先ず、ご主人・雲井さんの笑顔が印象に残りました。

前よりも希望に満ちた笑顔でしたので、新天地で確実な前進をされているのだろう…と安堵しました。

そして、希望は具体的な形で食材の仕入や扱い方に現れており、前よりも紀伊田辺と言う「土地」を感じさせる内容だと感じました。

「土地」に息づく食材を用い、個性を与えられた料理は、「ここでしか頂けない魅力」に満ちており、旅して食べる喜びがあります。

 

食材のバリエーションは1年を経過すれば更に広がるかと思いますので、季節を変えて足を運び続けたいお店だと思いました。

 

その後の再訪記事もございます。

 

この度頂いた料理は、下記の通りです。

 

八寸

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揚げ栗、金時豆のみぞれ和え、柿甘酢、秋刀魚の燻製、カボチャの金団とむかご、落花生、舞茸の舞茸幽庵焼き。

相変わらず瞬時に目を奪う八寸。

日本の秋を象徴する食材たちが共演し、小さな秋を堪能出来る秀逸な八寸だった。

秋刀魚は肝醤油を塗って燻しているのだろうか。

揚げ栗の香ばしい甘さ、カボチャの豊かな甘みに、秋刀魚のビターネスが好対照。

舞茸の幽庵焼きは後から柚子がふわりと香り、実に上品。

 

お造り

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地物のヒョウダイ(標準和名ヘダイ)。

ぷりぷりと滑らかにほどける繊維が魅力的で、真鯛とは異なる香りが楽しい。

僕は白身魚の刺身はあまり醤油を付けないが、ヒョウダイは醤油を付けた方が旨い。

醤油のグルタミン酸がイノシン酸を活性化させ、ふくよかな甘みが増す。

また、ご主人が準備してくれた地物の本山葵が泣かせる。

混ぜ山葵を憎む同行者の依頼に基づき、何とか見つけてくださったそう。

その心意気もさる事ながら、パンチ有る辛味も涙を誘う(笑)

しかし、それでいて甘みも感じる山葵であった。

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落ち鮎の焼きもの

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これはエクセレント!焼きの技術が素晴らしい…

串打ちも非常に精確。

落ち鮎で卵を抱いているため、腹に包丁を入れてからの焼きとなるが、旨味をこぼす事無く、火を入れ過ぎる事無く、

しっとり、ふっくらと焼き上げている。

鮎はクオリティも然る事ながら、やはり火入れが全てを決める。

なお、今回の鮎は富田川(とんだがわ)産。

頭寄りの香りが強く、ボディは穏やかな香りで、落ち鮎といえども香りと旨味を楽しませて頂いた。

落ち鮎には秋なのに夏の魚を頂く、少しせつない喜びがある。

 

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椀種は蓮根餅。出汁はアカハタで取っているそう。

中華では高級魚として知られ、清蒸(チンジョン)で使用されるアカハタ。

旨味が強い魚だが、出汁は柔らかく、自然な旨味を活かしており、媚びたところが無い。

塩気も丁度良い。

また、あしらいが空芯菜と言う点も尚更中華っぽく、面白い。

 

鯖寿司

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優しい〆加減で、しっとりとした食感。

酢飯は甘みを用いているが嫌味ではない。

手前の野菜はサツマイモのつる。

サツマイモらしい甘みがあり、結構びっくり。

 

きぬかつぎと鮪の酒盗、トリ貝

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これについては少し疑問を抱く。

酒盗自体はとても美味しいのだが、塩気がきぬかつぎの甘みをやや超えている印象。

誤差だと思うが、きぬかつぎの優しくふくよかな甘みが活きていれば尚美味しい。

 

炊合せ

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蒟蒻、椎茸、生麩、茄子。

生麩の甘みが印象深い。

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お食事

マツタケモドキを用いたご飯。

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香りは弱いものの、甘みはそれなりにある。

なお、器は江戸時代の織部。

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非常に状態が良く、時代を伺い驚いた。

 

水もの

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果物はホワイトサポテ。

初めて出会ったが、生産量、流通量が少なく、稀少性が高い果物である模様。

味わいとしては、メチャクチャ甘く、濃厚かつ芳醇なコクが魅力的。

細やかな粒子とごく僅かな酸味がラ・フランスっぽくもある。

一週間熟させているとの事。

 

未知の食材と出会う喜びは、地方を旅する喜びに等しい。

 

店名:召膳 無苦庵(しぜん むくあん)

食べるべき逸品:知られざる紀州食材を活かす唯一無二の雲井料理

予算の目安:昼1,200円、1,500円、夜・要相談

当ブログの内容は15,000円となり、県外から訪問される方は1万円以上がベターかと!

最寄駅:紀伊田辺駅から500m

TEL:0739-26-5600

住所:和歌山県田辺市高雄2-16-30

営業時間:昼11:30~、夜17:30~ ※昼は廉価なランチメニューを提供されておりますが、真骨頂は夜

定休日:不定休

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