すしログ 〜The Encyclopedia of Sushi〜

全力で鮨の魅力を伝えるブログ!日本料理、郷土料理、和菓子の名店も紹介します。Since 2015

すしログ日本料理編 No. 85 こにし家@三田(兵庫県)

兵庫県は三田にマニアック且つ本物の日本料理店があると聞き、エス・コヤマさんと合わせて訪問しました。

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ご主人は雅号を持ち熹志 侑紀但(キシ ウキタダ)と名乗っておられ、1946年生まれで、1973年に開店された料理一筋の方です。

お店は三田駅から少し歩いた場所にあり、外観からするとプロの料理人も通うと言う通人向けのお店には見えません。

内装もカジュアルで、小料理店と言った風情。

しかしながら、料理を頂いてみると、食が好きな人であれば「何だこれは!?」と驚きを覚えるに違いありません。

僕はこう言ったギャップが大好きです。

 

こちらで使用されている食材は一級品揃いで、調理は一見するとシンプル。

しかし、シンプルさの中に玄妙な手腕が発揮されており、舌に乗せた瞬間に広がる味覚の構成は極めて多層的で、官能すら覚えます。

足し算によって味を多層化するのは少しセンスがある方であれば出来る事ですが、ご主人の料理には攻めの姿勢の背後に引き算の調整が感じられ、一級食材が活き活きと精彩を帯びております。

本当の「引き算の料理」とは、素材を熟知し、幾重にも手を加えた料理である事を体感させてくれます。

まだ若輩の自分ですが、早くしてこちらの御料理に出会えて良かったと実感しました。

ワインに精通する若主人・小西智允(こにしさとちか)さんの今後のご活躍も楽しみです。

三田は大阪からならば比較的行きやすい場所なので、今後もタイミングを見計らってお伺いしたいと思います。

 

御料理に関してお話を伺ったところ、ご主人の口から出た、「(半世紀近くやって)やっとここまでですわ」と言う謙虚なお言葉の裏に、並々ならぬ努力の足跡と強い自負心が窺い知れ、非凡なる才能を感じ得た次第です。

 

尚、こちらのお店で頂ける日本酒もまた非凡。

奥丹波・山名酒造のお酒はその年で一番良いものを毎年30本入れておられ、一杯目に頂いた一年前の雄町はしっかりした苦味とキレの後に甘みが広がる佳き味わい。

貴の純米大吟醸ヴィンテージ2014と2015の飲み比べには痺れました。

2015年は決定的に奥行きが薄く、旨味、苦味、香りが2014に及ばない。

2014は凛とした気品があり、年ごとに圧倒的に違う事を体感させて頂きました。

ここまでの仕入れは、長年培われた信頼関係と、お酒への深い造詣が無ければ、実現出来ないでしょう。

 

頂いた御料理は下記の通りです。

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海胆豆腐

ねっちりとした食感に、濃厚な海胆の風味と磯の香りが立つ。

昆布を利かせた出汁に山葵を溶かしている。

どっしりした存在感ながらに爽やかな印象も与える海胆豆腐

尚、海胆の産地は淡路。

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鯵の棒寿司

〆た身は旨味たっぷりで香りが芳醇。

酢飯は優しい甘みと酸味が加えられており、鯵の〆加減に合っている。

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三度豆と人参の胡麻和え

胡麻の風味がとても強く、シャキシャキした食感も心地良い。

甘みは抑えられており、お酒に合う。

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お造り

驚嘆を覚えるアブラメ(標準和名アイナメ)!

ぷりぷりぷりっと非常に心地良い反発の後に、パツッ!と弾け、甘みがたっぷりと舌に広がる。

いやはや、圧倒的な旨味。

塩、ちり酢、醤油もあったが、何も付けずに立て続けに頂いてしまった、思わず興奮してしまったが、和歌山のケンケン鰹、明石のアオリイカも美味。

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特にケンケン鰹は雄々しい血の香りに妙があり、旨味も十分。

ちなみに、上記アブラメの産地は明石。

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更に嬉しい事に、アブラメの椀。しかも、大ぶり。

切り付けが独特で、皮に垂直に薄く包丁を入れており、繊維のほどけ加減が抜群。

じゅんさいも素晴らしいクオリティで、産地を伺ったところ東広島。

吸い地は出汁、塩気ともに控え目で双方を活かす。

特にじゅんさいの瑞々しさが際立っており、清廉な気持ちに導く椀。

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鰻の焼きもの

地焼きでふんわりと仕上げ、身のぷりぷり感も楽しませる焼き加減。

香りとゼラチン質が素晴らしい。

「香り」と言っても決して「臭い」」ではなく、鰻の良い香りである。

炭も良い備長炭を使っていると思われ、燻蒸香も相まって香り高い。

聞けば、須磨海の海の鰻であった。

付け合せのゴボウも非常に甘く美味しい。

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トマトの冷菜

炊いたトマトに豆腐とモッツァレラチーズのソースと変化球。

濃厚だけどバランスが良い。

それは出汁と少々の酢橘が引き締めてくれているからだろう。

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鮟肝

トロトロととろける食感の鮟肝!

ごく僅かに蒸して炊いてるのかな?

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鮑と小芋の炊き合わせ

鮑は柔らかくも旨味しっかりで、軽い苦味と余韻がある。

しかし、スッキリとした食後感。

小芋はとても甘い。

昆布を強めて素材の旨味と甘みとを活かしている。

鮑の蒸し時間は5時間との事。

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蛸の酢のもの

蛸は甘みが強く、包丁の入れ方が良い。

歯切れが良い上に、コリコリ感も楽しめる。

土佐酢も良い塩梅の出汁加減も酸味。

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三田牛と破竹

初夏のタケノコの苦味と香りが牛の脂の甘みにとても合う。

嫌みの無い牛肉の使い方。

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お食事

お米がとにかく美味しく、甘みしっかり。

水も良い事が分かる。

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自家製のちりめんじゃこも風味豊か。

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水菓子

マスクメロンと肥後グリーンとともに、Royal Lochnagar(12 Year Old?)のオールドラベルを少量用いているそう。

メロンをそのまま頂くよりも嬉しい水菓子。

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玉露

京都宇治。圧倒的な旨味を持つ玉露で、心地良い余韻に浸る事が出来る。


上記御料理と、前述の日本酒以外に長珍・禄純米大吟醸、白隠正宗・純米大吟醸斗瓶取りを頂き、お会計は2.1万円弱。

内容を考慮すると非常に優れたコストパフォーマンスです。

あまり良い言い方ではありませんが、こちらが本当の「分かる人には分かるお店」だと体感しました。

日本料理が大好きな人、日本の食材が大好きな人、日本酒が大好きな人はきっと感銘を覚えるお店だと思います。

 

店名:こにし家(こにしや)

食べるべき逸品:稀有な仕入れによる季節折々の食材と、それを活かす。

予算の目安:15,000円~21,000円(コースは1万円+時価、ボリューム次第)

最寄駅:三田駅から450m

TEL:050-5593-0523

住所:兵庫県三田市三輪1-13-28

営業時間:18:00~20:30(L.O.)、事前予約でお昼も可能(12:00〜14:00)

定休日:月曜