すしログ No. 181 鮨処やまだ@銀座

鮨処やまだ

ある晩、御年65歳を超える鮨通の先輩と共に訪問しました。

こちらの親、山田裕介(やまだゆうすけ)さんは何と元・大工職人と言う異色の経歴を持ち、しかも「進化系の鮨」を握られると聞きつけての訪問です。

当初は、正直なところ期待半分、不安半分と言ったところでした。

前情報やwebにアップされている写真だと確信が持てなかった次第ですが、訪問してみて驚嘆を覚えました。

(その後、再訪多数。最新の記事はコチラです)

やまださん外観

鮨処やまださんのシャリと仕事について

現状、まだあまり知られていないお店となるものの、既に個性が確立されており、何よりもシャリの完成度が高いです。

(→ブログ記載後、人気が高まり、有名なお店となりました)

シャリは酢の酸味をを立て、砂糖も加えておりますが、タネと合わせると酸味や甘みが和らいで感じます。

ひとえにシャリと仕事のバランスが良く、シャリのサイズ調整が巧い。

酢は横井醸造(ヨコ井)の與兵衛(よへえ)と白寿をブレンドされているそう。

親方曰く「與兵衛は劇薬(=旨く、パンチがあり過ぎる)」との事。

これについては甚だ同感です。

赤酢を用いつつ全てのタネに合うシャリを目指されているそうですが、その試みは既に成功している印象です。

硬さも結構攻めており、口の中でのほどけ加減は申し分無いです。

更にシャリに関して驚嘆すべき点は、タネによってサイズのみならず温度までコントロールされている点。

ハッキリ言って、ド変態です(笑)

いやはや、実に素晴らしい!

在りし頃(人気が爆発する前)の初音鮨さんが温度をコントロールされておりましたが、こちらはその上を行く研究を行っておられ、時間の経過に伴う温度変化のみならず、意図的に下げて供される事もあるから驚き。

料理と言うものは真面目な料理人よりも、一風変わった方の方が新しい地平を切り拓くものなので、親方の孤高の挑戦には舌も心も大満足を覚えました。

また、熟成仕事についても「あくまでも仕事の一つ」と割り切っておられ、熟成仕事だけで固めない点が好ましい。

熟成仕事を連発すると旨味が同質化してストーリー性が弱くなりがち。

故に、親方の考えには賛同を覚えました。

それと同時に、築地で皆が群がる高級なタネには斜めから見ておられ、あくまでも仕事で楽しませる事を主眼とされている点も素晴らしいです。

巷には料理人に高い素材を求める半可通が増殖しておりますが、そもそも、仕事(調理)で魚を旨くするのが鮨なので。

地方の職人さんには「東京はバブルで異常」と断言する方が多い現実を、東京の職人、料理人の方々も受け止められた方が良いと思います。

(→「鮨バブル」については、ブログ記載後、落ち着くどころか加速してしまいました)

ちなみに、こちらは酒肴だけでなくガリすら出さないのですが、理由はシンプル。

握り15貫で完成させる為、との事。

親方のストーリーテリングには鮨好きならば熱くなる事は必至です。

親方にとって「シャリとは額縁」。

タネと仕事を用いて絵を描くと表現されておりましたが、15貫のストーリーは起伏に富み、あっという間の楽しい時間でした。

しかも、銀座にあって15貫で10,000円と言う圧倒的なコストパフォーマンス。

費用対満足度が非常に高い鮨店だと感じました。

(→2019年冬に15貫15,000円に変更されました)

最後に一つ、気になった点を挙げるとするならば、シャリの炊き加減。

かなり硬めに炊かれているのは良いのですが、僅かにムラがありました。

ムラがゼロになれば、更に完成度が上がる事かと思います。

鍋肌の米は使わないなど、微調整を加えられると良いかと感じました。

頂いた日本酒。

天青・吟望朝しぼり、風の森・雄町純米、澤屋まつもと・愛山特純。

上述の通り、すぐに握りに突入です!

 

鮨処やまださんの握りの詳細

鮨処やまだ鮃

まず、白身魚が赤酢のシャリに合致しており、ホッとひと安心。

赤酢のシャリの場合、どのように白身と合わせるかが、お店見極めの第一ポイント。

こちらは熟成を掛けておらず、朝〆を軽く寝かせたもの。

よって、鮃本来の旨味とともに、ぷりぷりの食感と香りも楽しめる。

このあたりはシャリの砂糖が効果的に活かされている印象。

この正攻法の鮃の仕事で、十分楽しませてくれるお店だと実感を得る。

鮨処やまだメジマグロ

メジマグロ

甘みが舌に絡むように広がり、酸味も楽しめる。

鮃の旨味の後にメジと言う流れは良い。

脂が強過ぎず、酸味と言う新たな味覚に舌が刺激される。

鮨処やまだ八角

八角(ハッカク)

標準和名はトクビレで、主に北海道で頂ける白身魚。

出てきて驚きました(笑)

八角は旨味が強く、脂の甘みも深い魚。

シャリともぴったり合わせており、シャクッとした身を噛み締めると甘みが滲み出て、とろっとほどける。

地方タネを用いた江戸前鮨が好きな自分にとっては、こう言った握りを東京で頂けるのは嬉しい。

鮨処やまだ金目鯛

金目鯛

銚子産、10日熟成。

脂の強い金目鯛ならではの熟成感があり、ねっとりと甘みが強い。

しかし、ぷりぷりした食感もあり、熟成技術の高さも感じさせる。

鮨処やまだ鰤

長崎産、5日熟成。

甘みとともに鰤らしい強い酸味があり、これが良いバランス。

こちらにはシャリの温度を下げておられた。

温度のコントロールについては次回訪問時に吟味してみたい。

鮨処やまだ甘エビ

甘エビ

羽幌産。2尾を叩いてミンチ状にして握る。

舌(味蕾)と接する面積が広がる事により、旨味を強く感じさせる。

波状的に旨味が広がり、グイグイと牽引する甘み。

鮨処やまだ椎茸

椎茸

野菜握りとは街場寿司的だが、偏見を除去して頂くと、美味(笑)

炙った事による香ばしさが漂い、グアニル酸がシャリの酸味と協奏。

包丁の入れ方も良く、歯切れに違和感は無かった。

鮨処やまだ春子

春子

軽く〆(塩4分、酢4分)てから5日寝かせている。かなり大きなサイズの春子。

香りが良く、甘みが広がり、何よりも食感が良い。

ふわふわととろけるような食感で、春子としては今まで頂いた中でもトップレヴェル。

鮨処やまだ針魚

針魚

しっかり〆て脱水しており、むっちりとした食感。

強い味付けだが、シャリのサイズを小さくして調和させている。

このあたりには通好みの嬉しさがある。

鮨処やまだ墨烏賊

墨烏賊

烏賊だが、4日熟成。

それでいて、墨烏賊らしい食感を保持。

むしろ、パツッとした墨烏賊特有の食感に加えて、軽くゴワッとした力強さがあり、その後甘みがとろっと広がる。

実に面白い食感に仕上げておられる。

鮨処やまだ北寄貝

北寄貝

山椒と黒胡椒を使用。

山椒の香りと黒胡椒の辛味が良い塩梅。

鮨処やまだ帆立

帆立

宮城・雄勝湾のもの。

帆立らしい繊維のほどけ方をした後に、とろりと滑らかに消え、甘みが横溢する。

鮨処やまだ小鰭

小鰭

熊本産。大型の小鰭だが、〆の加減が絶妙!

旨味、香り、皮の食感を全て引き立てるような仕事!!

これは唯一無二。

小鰭の脂や水分に対して塩、酢の塩梅が秀逸。

極めて特徴的な仕事で小鰭の魅力を引き出している。

親方が「一番好きなタネ」と言うだけある。

ちなみに、親方は通常はほとんど江戸前の小鰭を使うらしい。

鮨処やまだ鯖

和歌山のもの。春子、小鰭とはまた異なる〆の魅力を提示する。

鯖の「生の食感」が内在しており、〆鯖と生鯖の両方の魅力がある。

生鯖は鮮度とアニサキス線虫の問題により産地でなければ中々頂けない代物。

脂の活かし方や香りの使い方も面白い。

ちなみに、親方は松輪、淡路、新潟の鯖が好みとの事。

九州の鯖は使わないとの事。

鮨処やまだ鮪赤身

鮨処やまだ鮪トロ

カナダ産。銀座わたなべさんも同様だが、国産に拘泥する必要性は無い。

鮪と言えばブランド産地や魚体の大きさで礼賛される方がいるが、見極めのポイントは時期と餌だと考える。

そして、仕事。

こちらは赤身、中トロともに漬けにしている。

熟成期間7日と、標準的な時間を置き、湯霜にして漬け。

赤身は酸味があり柔らかな旨味を凝縮させている。

シャリは漬けの鮪をしっかりと受け止める。

そして、トロで脂を強め鮪の妙を味わわせつつ、酸味もあり佳き味。

鮨処やまだ穴子

穴子

今や秋冬の定番となった産地、対馬産。

対馬産は江戸前、瀬戸内産に比べて身がふんわりしており、香りはやや弱め。

よって、これにはふんわりとした握りを以て調和させている。

今後定点観測していきたいお店です。

→以降、ほぼ毎月訪問しました。

2019年加筆時点でさらなる進化を遂げており、依然として目が離せません。

店名:鮨處(すしどころ)やまだ

シャリの特徴:赤酢2種類をブレンドし、砂糖を用いつつ、多くのタネと調和する硬めのシャリ。

予算の目安:10,000円~ →15,000円~

最寄駅:新橋駅から350m、内幸町駅から450m

TEL:03-3572-7534

住所:東京都中央区銀座7-2-14 第26ポールスタービル3F

営業時間:18:00~21:30

定休日:日曜、祝日

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