すしログ日本料理編 No. 3 民宿ふらっと@能登町(石川県)

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こちらのお店…と言うか旅館はイタリア料理なので、当ブログにアップするのは、少々悩みました。

しかし、宿の背景にストーリーがあり、料理の根底には郷土料理が存在するため、取り上げることに致しました。

こちらは元々は、「さんなみ」という郷土料理を売りにする料理旅館で、日本の「三大料理民宿」と呼ばれておりました。

能登の伝統調味料「いしり」を駆使した郷土料理は全国の美食家の胃袋を掴み、かの「美味しんぼ」にも登場。※いしりについては文末に注記

一日三組しか予約を取らないにも関わらず、数カ月先まで予約が一杯だったそうです。

しかし、人気絶頂の中、2011年3月に閉店されてしまいました。

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惜しむ声が多数あり、その後、「さんなみ」の郷土料理を体得した娘さんと、旦那さんであるオーストラリア人シェフによって、華麗に甦ることとなりました。

旦那さんの料理はベースはイタリア料理ですが、「いしり」を駆使した独自の料理。

「さんなみ」が営業されていた頃から、いしりと能登の食材に魅了され、能登に移り住んでおられたそうです。

料理を頂いた感想として、能登の食材を独自の解釈で再構築されており、最早「郷土料理」と言っても過言ではない、One and Onlyの料理だと感じました。

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一品目は【いしりのポテトスープ】。

頂いて、初手から胃袋を掴まれました。

濃密な味わいながらにポテトの粒子は粗くなく、喉をするっと通る。

ひとたび滑らかなスープを口にすると、ただただ旨味が舌に絡む。

クセのある「いしり」を巧みにポテトと融合されております。

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鮃のカルパッチョ

梅酢ソースが爽やかで、塩分の加減も良い。

寝かされた鮃の旨味、香りを壊していない。

振りかけられているのは柚子の皮、葉っぱは夏蜜柑。

梅酢ソースと柑橘類の香りが喧嘩せずに調和。

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バイ貝のサワークリーム仕立て

バイ貝の持つ甘みと軽い苦味を引き立てる調理。

サワークリームのコクと控えめな塩気がバイ貝にぴったり合っております。

なお、塩は能登の伝統的な手法である揚浜式で精製された塩を使用されている模様です。

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オコゼのフリッタ

食感をホロホロに仕上げる火入れで、油は軽くさっぱり頂ける。

部位ごとに異なる揚げ方をしており、オコゼの魅力を伝えてくれる。

手前の液体は柚子。

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ガーリックオクトパス

これも火入れが良く、吸盤を噛みしめるとモキュッと気持ち良い音!

ガーリックを鋭く利かせ、アンチョビの旨味を付加し、ネギとパセリで爽やかに。

ネギの甘みを感じる。

なお、頂いてきた料理は全て香りが素晴らしく、毎度頂く前に嬉しくなります。

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ブランド椎茸「のと115」のソテー、自家製バジルペースト添え

「のと115」は香りが極めて強く、あたかも干したかのよう。

純粋にこれだけでも美味しいが、自家製バジルペーストもまた白眉。

塩、油ともに控えめで、バジルの瑞々しい風味を活かしている。

バジル以外ではチーズの味わいが比較的強めだが、ガーリックと松の実も穏やかで、全体的に上品に仕上げている素晴らしいバジルペースト。

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アオリイカを用いた自家製パスタ

いしりカルボナーラの底にはイカスミのソースを敷いており、食べ進める内に味が変化する粋な仕掛け。

無心で頂いてしまうほどに魅力的。

ネギの使い方が巧く、濃厚な味わいの掛け算ながらに飽きさせない。

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ナメラバチメのソテー

能登が誇る高級白身魚であるナメラバチメ(一般名キジハタ)。

骨が多く細かい上にゴツゴツしているが、丸々頂けるのは嬉しい。

食べにくい部位ほど、ゼラチン質が豊富でねっとりと旨い。

パンが進んでかないません。

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イチジクのワイン漬け

デザート。手ブレ、恐縮至極!

旬のイチジクの甘みと香りを満喫出来る心地良い〆でした。

舌も胃袋も大満足。

しかも、ここは旅館なので、あとは湯に浸かり寝るだけです。

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朝起きると、目の前には爽やかな海。

朝ごはんは、女主人の郷土料理を頂けるという至福。

食堂に行くと、囲炉裏で焼き物を焼いており、香ばしい匂いに胃袋を刺激されます。

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ご飯は能登産コシヒカリ。

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品数が多く、豪華です。

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いしり炊き込み焼き

いしりの旨味を活かしております。

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こんか鯖

鯖の糠漬け。いかにも能登を感じさせる、ご飯キラーな逸品。

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個人的に印象深かった紫蘇キムチ。

素晴らしい料理と素敵な景色を堪能し、お値段は一泊14,000円(or 12,000円)。

立地的には少々行きにくかもしれませんが、ハッキリ言ってお値打ちです。

またいつか訪問したいと強く思いました。

※いしり

イカの肝を熟成させた醤油。秋田のしょっつると並んで、日本を代表する魚醤。タイのナンプラー、ベトナムのニョクマムなどと同様に独特の香りとコクを持つ。「さんなみ」のいしりは毎年7〜8tタンクに仕込んでいたそうで、製法としては、イカの肝を大量の塩で漬け、2年間熟成・発酵させた後に1度だけ絞り、火入れをして熟成を止めて完成とする。大量のイカを使用するが、いしりとなるのは原料の20%程度だという。

店名:民宿 ふらっと

食べるべき逸品:いしりイタリアン

予算の目安:12,000円~

最寄駅:なし、車がベター

TEL:0768-62-1900

住所:石川県鳳珠郡能登町矢波27-26-3

営業時間:要確認

定休日:要確認

※完全予約制です

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