すしログ No. 143 初音鮨@蒲田

※本記事については、業態が変わる前の内容となります

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今回で3回目となる初音鮨。

人気が沸騰する前の2014年に伺って以来、

2015年、2016年と1年に1回訪問していることになります。

2014年訪問時の記事

2015年訪問時の記事

今回は初めて鮪の旬ではない時期での訪問。

しかも、一般的に日本料理にとって食材が弱いと言われる3月の訪問となりました。

鮪が「スペシャリテ」とされているお店で、食材が最も弱い時期に、どのような仕事があるか?

それを確認したく、予約開始日の1月初頭に予約を取ろうとしたのですが、既に予約が一杯…。

むしろそれどころか、翌月以降の予約も解禁されたため、初夏まで予約が一杯と言う、恐るべき情報を得ました。

これはもう、伺うのが厳しいかな…と思っていたところ、大変嬉しい事に今回予約を譲ってくださる方がおられ、念願の「食材が最も弱い時期」での訪問となった次第です。

譲ってくださった紳士には、この場を借りて御礼申し上げたいと思います。

 

さて、今回伺った結論としては、「食材が最も弱い時期」であっても、中治親方の独創的な仕事は冴え渡っており、唯一無二の魅力がありました。

「劇場」と評する方が増えてきましたが、一方的な演技ではなく、お客に投げ掛けるような語りと手の内を明かす率直さは煌めきを失っておりません。

 

しかし、この度、3年間で初めて少し違和感を覚えました。

シャリに乱れがあったためです。

僕はこちらの握りについて、「シャリを時間軸で再解釈する握り」と評しました。

切りたてのアツアツのシャリから、冷めて馴染んでいく過程で、シャリに仕事を合わせて行かれる高度なテクニックに感銘を覚えた次第です。

こちらは中治親方のパフォーマンスと「タネのクオリティ」が着目されがちですが、個人的には、最大の魅力はシャリと仕事の調和にあると考えております。

しかし、この度は後半戦で仕事が施されたタネとシャリの温度に誤差があったり、握りの型が悪いものがあったりと、過去との違いを感じてしまいました。

 

…それはさておき。

実はこの度、4月よりお値段を上げざるを得ないとお伺いしました。

外資が上質なタネを高額で競り落とすため、仕入価格が高騰している事に起因するとのこと。

個人的には、結果として致し方ない値上げだと思います。

と言うのも、昨年12月に訪問した際、タネ質が過去に比べて圧倒的に上がっており驚いたものです。

それでいて同じ金額とは…と。

世間からの期待に応え続けた結果、仕入れをどんどん強化されてきたのでしょう。

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食べログ上では全国第2位の鮨店となり、先の予約が取りにくくなっている中での値上げ。

現在お酒を飲んで2.5万円のところ、恐らく2万円台後半~3.5万円程になることが予想されます。

この価格帯に入ってくると、食材のみならず仕事がシビアに試されるようになります。

庶民の僕にはそうそう伺えない領域に突入しますし、それならば、仕事でタネ質をカバーするお店を2軒訪問したくなってしまいます。

とは言え、過去ずっと進化し続けてきたお店ですし、親方はまだ52歳。

この度の価格改定が変化ではなく進化となる事を祈念しております。

再訪し、新たなるステージを楽しませて頂けることを。

→その後値上げが続き、2020年にはお酒抜きのおまかせ55,000円まで上がったようです

 

頂いた握りは下記の通りです。

 

いつも通り、切りたてのシャリの試食からスタート。

「ちょっと柔らかめ」とおっしゃるが、炊き加減はちょい硬めで、良い塩梅。 

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小鰭

勝山。〆て5日寝かした小鰭。

艶があり、握られた瞬間の香りが絶妙。

この度のものは、頂いても旨味よりも香りが印象的だった。 

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トリ貝

三河。卵巣が付いており、ねっとりとした甘みが炸裂する。抜群。

食感はシャクシャクと歯切れが良い。

この味わいは、ひとえに火入れ(女将さんの仕事)によるものと見た。

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桜鯛(真鯛の雌)

竹岡。松皮造り。背側と腹側を。

食感を殺さず旨味を高めており、独自の〆の仕事。

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牡蠣×2

陸前高田。非常に分厚いが、とろろんと、とろけるようにほどけゆく。

たおやかな食感に、強い磯の香りが漂う。

こちらの牡蠣の握りは初訪問の頃から絶品。 

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京丹後。これは素晴らしく、時限爆弾のように香りと旨味がほとばしる。

噛みしめるごとに旨味が増す。

 

この度の鮪は高知のはえ縄漁による320キロ、7歳くらいの鮪。

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仕入先の石司のみならず、築地に当日揚がったモノの中でも、間違いなくトップレヴェルだろう。

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この時期に頂く鮪としては驚嘆に値する味わい(故に価格は冬場の大間を凌ぐ筈)。 

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鮪赤身

繊維はみっちりしておりながら、歯切れは良い。

柔らかな酸味が持ち味。

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赤身漬け

生よりも香りが凝縮され引き立っている。

また、シャリの赤酢の旨味が底を支え相乗効果を発揮する。

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九十九里の手掘り。酒蒸しで頂く。

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鮪中トロ

脂の粒子がきめ細かく、濃厚な旨味を楽しませてくれる。

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鮪中トロ漬け

皮ギシの甘みが強調され、香り、酸味も引き立っている。 

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虎河豚白子

大分。10キロの魚体の白子。

惜しむらくは焼きすぎで、温度も逃げてしまっており、シャリとのギャップを感じた。

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アオリイカ唐墨

唐墨の風味が先行し、イカの甘みが追い付いてこない。

食感もアオリイカだと野暮ッたい印象。 

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鮪大トロ

時期的に如何か!?と思いつつ頂くと、決して大味でなく甘みは芳醇で上品。

 

毛蟹

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根室。航空便。茹でたての殻から身を外し、熱々の皿の上で蟹味噌と混ぜる。

味わいはそのものズバリ蟹だが(笑)、中心に仕込まれたシャリの酸味がバランサー。

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日本酒蟹味噌

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鮪大トロ漬け炙り

素晴らしい仕事だと再認識。

口に入れた途端に、消え去る。

そして、脂の存在を殆ど感じさせず、それでいて強い甘みを舌に与える。

他人には真似出来ない、親方独自の世界は鮪に在り!と再認識しました。

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極上の太巻き

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干瓢巻き

海苔が美味しいので伺ったところ、井上海苔店の飛優青混ぜ。

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玉子

前回は鱧を使用しておられたが、この度は芝海老。

こちらの方が香り、旨味的に優れている。

食感はひたすらふんわりしており、白眉とも言える玉子。

これにも進化を感じました。

 

頂いた日本酒は京都・まつもと純米大吟醸山田錦26BY、石川・五凛純米山田錦

宮城・日高見純米、山梨・旦純米無濾過生原酒(友人とシェア)。

総括は冒頭に書きましたので、次回の訪問を楽しみにしている、ともう一度記して筆を置きます。

 

店名:初音鮨(はつねずし)

シャリの特徴:甘みを排除し、赤酢と米酢をブレンド。味わいを時間軸でコントロールする。

予算の目安:20,000円~26,000円→2019年よりおまかせ45,000円~→2020年おまかせ55,000円~(前払い)

最寄駅:蒲田駅から360m

TEL:03-3731-2403

住所:東京都大田区西蒲田5-20-2

営業時間:17:30、20:00開始の2回転制 →15:00、17:00、19:00の3回転制

定休日:日曜、祝日 →水曜、木曜、日曜、市場休場日

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